silent

都会のトム&ソーヤのsilentのネタバレレビュー・内容・結末

都会のトム&ソーヤ(2020年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

結論から言えば
「THE 夏休みの娯楽映画」
謎解きを売りにしたいらしいが、
これと言って凄い仕掛けがあるわけ
ではない。
むしろ、物語が進むにつれ粗野が
目立つ印象。

一番引っかかったのは、主人公たちの
同好会仲間がZというゾンビになって
しまったこと。

彼らも実は、謎解きイベントの仕掛人
だった、というリアルにありがちな
展開ならまだ理解しやすい。
しかし、主人公の台詞を
聞く限り、そうとは受け取れない。
いつの間にか、彼らの世界は
【非日常空間】になってしまい、
平凡な中学生だったはずの
仲間たちはゾンビにされて
放置のまま。彼らはあの映画において
どういう立場であり、どういう役割が
あったのか?
【日常】と【非日常】の線引きが
曖昧な演出のまま物語が進んで
いくのだ。
(ちなみに非日常感を色濃く打ち出し
たいのなら、本広監督の『ブレイブ』
並にぶっ飛んだ設定の方が
分かりやすい)

最後には上記のような疑問点が
明らかになることはなく、
いつの間にか主人公たちが
謎解きで街を救っちゃった、みたいな
ストーリーになってしまっている。
他にも細かいところが色々と気がかり、
登場人物に上手く感情移入する事が
出来なかった。

また、私は以前からジュリアス役の
玉井詩織さんに女優としての将来性を
感じていた。
特に感情の細やかな動きを
見せるのが上手で、この映画でも
その力を発揮してくれるのでは?と
期待したのだが…。残念ながら、
彼女の『良さ』を感じ取ることは
出来なかった。

良かった、と思うのは城 桧吏くんの
瑞々しさと市原隼人さんの
凄みのある演技力である。
特に、市原隼人さんはまだ実年齢
34歳なのに、優しく紳士的に
振る舞いながら、一つひとつ鋭くて
重い台詞を吐き、主人公たちを
追い込んでいく。
平たく言えば「圧が強い」のだ。
失礼を承知で言えば
この作品で彼のその実力を見直した、
とも言える。

個人的な見解だが、映画とは
繰り返し見て、その都度何かを感じ
取れる作品は良作と言えると思って
いるのだが、
こちらについては、おそらく一度
しか観ることはないだろう。
silent

silent