silent

恋空のsilentのネタバレレビュー・内容・結末

恋空(2007年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

公開当初は大ヒットして様々な
メディアで持ち上げられる一方、
辛辣な言葉で揶揄されていた
事もうっすら記憶している。
かく言う私も、後者の
イメージが強く、今までまともに
見たことが無かった。

前半は「幸」と「不幸」を
これでもか!とばかりに
勢いよく畳み掛けてくる。

正直、すぐに食傷ぎみとなった。

その後、中盤ではラブラブ
だったはずの2人の突然の別れ。
やがて、ミカには新しい恋が
訪れる。

よく分からないけど
互いの思いが行き違っちゃった
のかな〜なんてぼんやり思って
いたら、
後半では、更なる怒涛の展開が
待っていた。
実はヒロが病に侵され
余命幾ばくもない。
中盤の突然の別れも
「ミカを悲しませたくない」と
いう一心の、ヒロの嘘だったことが
分かり、2人は再び心を寄せ合う…。

「文字だけ」を見たら 何となく
安っぽく感じてしまうが、
主人公 ミカを演じた
新垣結衣さんの透明感溢れる存在感
と、ヒロを演じた三浦春馬さんの
卓越した演技力で
「瑞々しい、若者の精一杯
生きた証の物語」に変わっていく。

これまでも、あらゆる所で絶賛
されていた新垣結衣さんの透明感。
技巧派でもないが棒演技でもない、
素直な演技と、唯一無二の透明感が
一途で不器用な生き方をする
主人公・ミカの姿と
ピタリと綺麗に重なる。
何とも形容し難い、その存在感は
新垣結衣さんだけが持つ最大の武器
である。彼女が演じると 凄惨な
出来事さえも決して禍々しく
なったり、重苦しくならない。

そしてヒロ役の三浦春馬さんの
演技の真骨頂は、後半に遺憾なく
発揮される。前半は無鉄砲な
ヤンキー風情なのに、
後半では、1人の女性への熱い
想いが迸る、なんとも健気な
青年になる。

自分の寿命を悟りながらも、
「愛したいし、愛されたい」
「自分が居なくなっても幸せで
いてほしい」という願いを
写真や日記という形で遺した。
色々な想いに揺れ動く様子と、
病に苦しむ姿は、その辛さが
手に取るように分かるような、
素晴らしい表現力だった。

悲しい現実は変えられないけど
何となく、ミカの幸せな未来を
予感させるラスト。

ありきたり、かもしれないし、
予定調和な印象も否めないが
愛する人との思い出が
新しい一歩を踏み出そう
とする彼女の力になる。
ミカがそこに希望を見いだせて
良かったな、と思わず
ホッとしてしまう。

若さゆえの脆さや未熟さ、
残虐性など様々な出来事を
ぶち込みながら、
登場人物の人物像や背景を
深く掘り下げたわけでもない、
個性がありそうでなさそう…
そんな作品。
だが、主役の2人が
この人たちだったからこそ、
また、主題歌がMr.Childrenの
曲だったことも相まって、
鑑賞後にどこか爽やかさを
感じるような「アオハル」
の物語として昇華できたのだと
思う。
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