踊る猫

WAVES/ウェイブスの踊る猫のレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
3.9
運命の歯車が狂う、ということは往々にして(恐らくは、誰の人生においても)ある。この映画はそういう墜落/破滅を生々しく描き、そこから再生の兆しを描こうとした力作である。なるほど、センスの塊のような映画だ。全体的にまんべんなく配置されたメロウな音楽(レディオヘッドまで!)。そしてチカチカ明滅する光および、ケバくなるのを恐れず彩りを添えられる赤や青の原色。他のどの映画にも似ているようで似ておらず、この時代においてオリジナリティを発揮することには成功していると思う。だが、古典的な完成度があってこそそうしたセンスは活きるのではないか、と思わなくもないのが剣呑だ。平たく言えばストーリーにおいて未整理な部分が目立つ。なぜタイラーとその父は強さにこだわるのか、といったところがもう少し「親切に」描き込まれていればと惜しく思う。だが、勇敢な作品であることは疑わない。この監督、成長すればバリー・ジェンキンス的な繊細な映画を撮る人になるのかな(と、ふざけた当てずっぽうで〆る)。
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