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グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇のMaUのレビュー・感想・評価

3.4
太宰の未完の同名原作をベースに戯曲として創作された男と女の愛憎コメディ。この数日前、再演された舞台を鑑賞。ということでこちらも楽しみで鑑賞。

台詞や展開は創作されたケラリーノ・サンドロビッチ版をベースに、少し映像向けに設定を変えたところもあり。でも、戯曲でも印象に残った台詞などはそのままのところが多かった。

戦後、疎開先に妻子を置いて、闇の商売であぶく銭を手にし女遊びもやりたい放題の編集者、田島。疎開先から妻子を呼び寄せたいが、愛人の清算がうまくいかない。そこで、妻に見せかけてきれいな女を連れ歩き、愛人にサヨナラを告げようと思いつく。妻に仕立てようと目をつけたのは、ダミ声が残念だがとにかく美しい行商人のキヌコという女だった…

どうしようもないグズグズした編集者田島に大泉洋はなかなかいい。女を清算したいが女好き。それがキヌコに対してもちらつくのだが、その加減のちゃらんぽらんさが似合う。対するキヌコの小池栄子は、舞台初演の際この役をやっており、演劇賞も受賞している、とのことで、昭和のクラシックなドレスアップも似合うしはまり役。ただ、映像にするとキヌコのダミ声(これは太宰の原作に書かれている設定)の表現が難しいものだと感じる。やや演出がかって見え、芝居ベースの映像化に少し無理があるのかもと感じた。芝居よりかなり短くなっているが、それぞれの愛人たちは個性的でインパクトがあり、長さはこれでよいのかも、と思う。ただ、ラストの展開がやや強引。ここも芝居なら成立するが、映像にする難しさがそのまま出た感じがするな。

太宰が作品を完成させていたらどんな展開だったのかわからないが、そもそも、愛人を清算したくて画策する男なんてコメディでしかない。そう思うと素直に大泉と小池のテンポのよいコメディなやりとりは悪くなかったかな。二人とも好きな役者さんだし… 「グッドバイ」の言葉の意味や方向性も様々に楽しんでみるとなおよし。
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