ゲイリーゲイリー

失くした体のゲイリーゲイリーのレビュー・感想・評価

失くした体(2019年製作の映画)
3.0
アニメ作品の強みを最大限に活かした作品だった。
実写で行うとグロテスクさが強過ぎたり、現実感が伴わない描写になりそうな場面を違和感なく描けたのはアニメ作品だからこそだと思った。

本作品の魅力の一つである斬新な設定も非常に良かった。
右手が失った体を求め、小さな世界ならではの障壁や人間の目を盗んで冒険する様は、どこかトイストーリーを彷彿させた。

また、右手の冒険と平行して挿話される右手の持ち主であるナオフェルの過去にも非常に興味をそそられた。
セリフ自体は少ないが、それを補って有り余るキャラクターの表情や仕草などはアニメ作品とは思えぬほどの人間味があった。

本作品はなぜ右手を失ったかの理由を追求するミステリーではない。
あくまでも、右手を軸に展開される斬新な設定かつ純度の高いヒューマンドラマである。
過去との決別のメタファーとしても右手を描いていたのではないかと個人的には思った。