ドント

ラ・ジュテのドントのレビュー・感想・評価

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)
3.8
1962年。ヌーベルバーグ(新しい波)の世代に属する監督による、ある実験的手法を用いた30分にも満たないSF短編映画。どんな手法かは観るとすぐわかります。敵国に支配され人々は地下に暮らす近未来のフランス、ある男が人類の将来のため、敵の科学者により過去と未来へと向かう。過去にいたのは男の記憶に残る女だった。
アニメに限らず、映画とは結局1秒24コマの「パラパラマンガ」じゃないのさ、と言わんばかりの手法で描かれている。しかしこの、まったくもって枚数の足りぬパラパラマンガの隙間に、スカスカの中に置かれ続ける1枚1枚とその合間に、間違いなく物語と情感が立ち上がってくる。断片しか示されない時間の一点の連なりから、30分の中にある戦争と圧政と色恋とSFの100分の映画が確かに幻視される。
そんな我々が感じる圧縮された時間はそのまま、主人公の過去~現在~未来の旅路だ。ほとんどが主人公にとって大事な、心に刻まれた瞬間であるが故に、我々はその強い奔流に抗えない。誰しもがそういう瞬間を持っているからである。そして唯一「完全に連続する」シーンには尋常でなく心奪われる。美しい、まるで走馬灯の最後の数秒のように。映像なるものの本質があらわになったかのような、鮮烈な「映画」体験。
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