噛む力がまるでない

約束の宇宙(そら)の噛む力がまるでないのネタバレレビュー・内容・結末

約束の宇宙(そら)(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 宇宙飛行士の分野における女性のエンパワーメントがメッセージの映画である。ミッションのクルーに選ばれたフランス人女性飛行士のサラが、訓練での苦労や愛娘との絆を通して立派に宇宙に飛び立つまでを描いているのだが、個人的にあまり好みではなかった。正直、主演のエヴァ・グリーンの魅力だけっていう感じがする。

 ヨーロッパ映画なのでソフトストーリーの語り口になるのは仕方がないにしても、題材とどうも食い合わせが悪いように思う。「サラが訓練で苦労する」→「娘とのコミュニケーションもうまくいかない」の繰り返しが単調で、なんだかサラがどっちつかずのままに見えてくる。
 打ち上げ前日に隔離施設を抜け出し娘とロケットを見に行くシーンが大きなポイントになっていて、このシーン自体作ることは悪くないのだが、仮にも宇宙へ1年間の重要な任務につく人間が、ああいった衝動的な行動を取るのは非常に無責任に感じる。あれだと規律を破っても夢は叶うと言ってるようなものだし、映画のメッセージすら台無しにしかねない。宇宙への夢と娘に対する想いの狭間で揺れるサラの姿がこの映画の魅力だが、それでもサラの信念や覚悟が見えづらい話になってしまっていると思った。

 欧州宇宙機関の協力の元のロケーションもいいし、エヴァ・グリーンやマット・ディロンたち俳優の演技は悪くない(育児を絡めた男性描写は半端になっている気がした)。子役のゼリー・ブーラン・レメルも存在感があり、母親との複雑な距離感をよく表現している。