群青

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームの群青のレビュー・感想・評価

4.2
2022年劇場鑑賞1作目。
字幕で。
本当吹替で観たかったけどIMAXでも観たかったので…


鑑賞する前日にネタバレをネタにした画像を見てしまったのがダメだった…ギリギリまで避けられたのに…


とはいったものの作品としては非常に楽しめたし泣きましたよ、正直。
前作が終わった時点で、こういう展開がこの先待っていたらやばいなって思ってたらそれがだいたい当たっていてアレだったけど笑

確かに素晴らしかった。
MCU関係ない過去のスパイダーマンシリーズの敵が久しぶりに出てくること。前半のアレも中盤のアレも、涙が溢れたアレのシーンも。確かに良かった。

やっぱり自分はヒーローとしてスパイダーマンに思い入れがあったのが改めてわかったし、レビューの通り、数字も高いです。自分のこれまでの映画数から見れば。
当然、大好きなスパイダーマンだからという補正もあるし、作品自体も良かったこともある。
個人的に、ネタバレのアレな部分を除いたらとても好きだったのは、ストレンジのミラーディメンションにスパイダーアクションが合わさったところ。ああいう描写をでかい画面で見れたこと自体が興奮するし楽しかった。

スパイダーマンとはどういう存在かを突き詰めた結果、ああいうラストになったのもまあ分かるし、自分が前に予想していた部分だったから、ある種期待通りだったわけなんですが…


ここからは肯定派にとっては異議ありかもしれません。作品として非常に良かったのは大前提として個人的には思ったこと、感じたことをそのまま書きます。


まず、映画的な面白さでいうと前作のファー・フロム・ホームの方が好きです。というか他のスパイダーマンシリーズよりも低いです。

なぜかというと、今作は前作のラストから始まるので前作のネタバレはするとして、敵のミステリオを描き方。
トニー・スタークへの恨みとして自分のホログラム技術を発展させ、一度はスパイダーマンに勝つ。あの中盤のベルリンのバトルがすごく好き。サノスという強大な存在の後にどんな強者を描くのかというテーマにおいて、ミステリオは完全に違うベクトルなのに成功している。
単に腕力が強いのではなくCGを使って現実かどうかを分からなくさせる、という戦い方だった。これは、MCUにおいてエンドゲームというインフレの極地に達した後のキャラとして、非常に秀逸だったこと。そして、CGという現実においても発達しまくった技術をそのまま映画内の構造に落とし込むという入れ子構造に驚嘆した。
だって、ミステリオがCGを使ってリハーサルをするときは、彼が撮影で使用しているであろう服をそのままキャラが使っているのだ。こんなことない。

観客は見たいものを見せられれば真実で無かろうとも信じようとする、という昨今のフェイクニュースに対する皮肉で、それがそのままスパイダーマンにとっての強敵になる、というテーマはまさに神がかったアイデアかと思った。

対して今作はMCUとは無関係な過去のスパイダーマンシリーズの敵。確かにファンサービスでもあるし今作の話の根幹をなすテーマなので面白いっちゃあ面白いけど、それ二次創作のやることじゃね?と思ってしまった。
だって新しい敵は一人も出てこないのだ。

これはネタバレになるアレにも言える。劇中で起きるアレも観ていて本当に嬉しいし、最高の瞬間というのもいくつもあったけど、そのアイデアを使ったら反則じゃないかな?二次創作で良くね?と思ってしまった。
つまり、発想が新しくない。

自分だってそういう予想して楽しんでたくせに!という異論は受け止めます。
確かに自分だって想像してたけど…けど…なんかアレはある種禁じ手だし、もうそれやってしまったらマジでなんでもありなのでは?と否が応でも思ってしまう。
これは関係ないけどデッドプールでも思う。第四の壁の破壊というネタは面白いけど、やりすぎるもなんでもありになりすぎるので逆に面白くなくなると思うんだよな…

話を戻すとマルチバースという概念はタイムトラベルをやってしまったエンドゲーム後におけるMCUの今後のサーガの柱になるっぽいけど、ああいうファンサービスはこれと次のストレンジまでにしておかないと、いくらなんでもやばいんじゃあ…という気持ちになってきた。

これはただでさえ数が増えてきて一見さんお断りになってしまっているMCUへの新規顧客増への妨げにもなるんじゃないかと思うから。
だって今作を真に楽しむためにはMCU26作品以外にも、全く話としては関係のないスパイダーマンの2つのシリーズ計5作と、ポストクレジットのアレを含めると+2作、ともはや訳のわからない領域に達してしまっている。
まあこのスパイダーマンに限って言えば、逆にMCUはみなくていいかもしれんけど…
しかし、作品内の小ネタを拾おうとすると否が応でも過去作が絡んでくる。

書きながら思ったけど、この小ネタを拾うためには全て観ておかないと楽しめない、というのも危ない発想なんじゃとさえ思えてきた。1,2作だけならまだしも…


もう一つはMCU版スパイダーマンの作風。
トム・ホランド版は基本的に明るい作風で、何より正体を知っている人が周りにたくさんいることだった。
それが彼の拠り所だったし他のシリーズとの差別化になっていたと思う。

今作の結末はスパイダーマンとは何かを突き詰めた結果だと書いた。
その何か、とは結局これまでのスパイダーマンと同じようなトーンになる、ということでもある。
せっかく差別化できていたのにこれじゃあ前と一緒なんじゃないのか。
描き方は少々変えてもMCU板のピーター・パーカーの良さを見せて欲しかった、と思った。


何度も言うが本当に楽しかったし泣いた部分もあった。ウィレム・デフォーのゴブリンの圧巻の演技も凄かったし、ピーター・パーカーとMJのリアルでも交際してる二人のイチャイチャ感もすごくよかった。
この作品でやっとスパイダーマンがスパイダーマンになった、と言うのも非常によくわかる。


が、新しさはあまりなかった…これに尽きる。
ファンサービスに媚びたとまでは言わないけどさ…
けどさ…なんなんだろう…自分でも整理がついていないだけかもしれない。また時が経って観たら理解できるかもしれない。
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