ひろぽん

ジェントルメンのひろぽんのレビュー・感想・評価

ジェントルメン(2019年製作の映画)
4.1
長年にわたる大麻の大量栽培・販売ビジネスにより財を成したアメリカ人のミッキー。その利権総額は500億円。だが、ビジネスを売却し、引退するウワサを聞きつけ目の色を変えた強欲なユダヤ人大富豪マシュー、下衆な私立探偵フレッチャー、ゴシップ誌の編集長、チャイニーズマフィアのドライ・アイ、さらには下町のチーマーまでもが跡目争いに参戦。ジェントルメンと呼ばれる一流のワルたちによる駆け引きを描いた物語。


麻薬業界の帝王ミッキー・ピアソンが射殺される冒頭から始まる。物語はレイモンド邸にて、私立探偵のフレッチャーとミッキーの右腕のレイモンドの2人の男によりストーリーが語られていく。フレッチャーがレイに対してゆすりのネタがあると言い、事件の全貌をまとめた脚本を話し始める。

フレッチャーが集めた情報を元に作られた脚本は映画化しようと企んだものであり、所々彼の想像による演出が加えられている。

バラバラの時系列での出来事が語られ、話が進行していくにつれ何の繋がりもないような話や事件が繋がり、バラバラの点が線となり最終的には綺麗な円となりスカッとまとまる構成が非常に面白い。

その反面、ストーリーがある程度進行するまでは繋がりが見えなかったり、登場人物が多く、しっかり状況を整理しながら観ないとこんがらがってしまうほど複雑。

後半にかけてドンドン面白さが増してくる所が本作の見どころ。時系列をバラバラに散らばせて、ピックアップする映像のチョイスや切り取り方によって事実を誤認させる手法により、終盤には大どんでん返しが待っている。


貧困家庭で育ったミッキーは奨学金を貰いながら、裕福な家庭の学生に大麻を売りさばき、一世で巨額の富を築き上げた天才。現在も誰にも気づかれない場所で麻薬栽培をして事業を成功させていたが、裏社会に嫌気がさして愛する妻のロザランドと平穏な隠居生活を待ち望んでいた。

愛妻家のミッキーの妻に対する一途な想いはもちろん、そんなミッキーの妻も事業を持っており、かなりのやり手。そして、肝っ玉が据わっているクールな女性として描かれる。後半になりその伏線が綺麗に回収されていく所も良かった。

豚とのトラウマFuck映画、大噴射するゲロシーンなど決してクールではない泥臭い演出も悪たちによる争いとしてはえげつないやり方。

コーチ率いるトラックスーツを身につけた格闘技集団「トドラーズ」のパフォーマンスが最高にイケてて格好良かった。ミッキーの麻薬栽培工場を襲撃した動画をラップで自己紹介して編集してYouTubeにアップしてみたり、ロシア人マフィアを襲撃したりと怖いもの無しな若さ所以の勢いと行動が凄かった。バカなのかなと思いきやただ真っ直ぐなだけというのが面白い。教え子のやった責任をとるコーチの覚悟も素晴らしい。エンディングのトドラーズのパフォーマンスも最高にイケてるから最後まで楽しめる。

レイモンドの信頼できる安心感、チャイニーズマフィアのドライ・アイの本気で下克上を狙いに行く野心、せこい手を使おうとする大富豪のマシュー、金にがめつく頭もキレるが詰めが甘いフレッチャー、敵に回す相手を間違えたゴシップ誌の編集長など、ダンディな個性的なキャラたちが魅力的だった。

ミッキーを演じたマシュー・マコノヒーの冷静なのにやばい雰囲気が漂っている圧倒的な強者感や、頭もキレる絶対王者の貫禄がエグくてめちゃくちゃ痺れた。

形勢逆転を繰り返し誰が勝つのか分からないまま真相が明かされていく構成がとても面白い。そのまま2回続けて観たけど、それでも何ら違和感なく話が繋がってしまうのが凄い作品だと思う。

ゆるぎない圧倒的なジャングルの王が格好良い!

“疑いがあってはダメだ。
疑いは混乱を生み破滅を招く。”

この言葉の通り相棒のレイモンドを最後まで信じ続けるミッキー。


“If you wish to be the king of the jungle, it's not enough to act like a king. You must be the king.”

「ジャングルの王はうわべの振舞いだけでなく本当の王にならねばならない。
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