優しいアロエ

カサブランカの優しいアロエのレビュー・感想・評価

カサブランカ(1942年製作の映画)
4.0
“Here’s looking at you kid”

 フランス領モロッコ、カサブランカでの劇的な邂逅。戦争はふたりを離し、また巡り合わせた。

 公開は1942年。第二次大戦真っ只中というだけあって、連合国同士のつながりやドイツの脅威など、特有の時代背景が忍ぶ。というのも、本作の舞台となるカサブランカはヨーロッパ人がアメリカへ亡命するための中継地点であるからであり、アメリカに希望を見出しているところ含め、ややプロパガンダ的な作品ではあった。

 しかし面白いのは、この「アメリカへの憧憬」が、ゴダールの『勝手にしやがれ』へと派生したこと。『勝手にしやがれ』のベルモンドは『カサブランカ』のハンフリー・ボガードに憧れたイタカッコいい奴なわけだが、ゴダールはただ魅力的な男性のアイコンとしてボガードを引用したわけではなさそうである。

 セバーグ扮するヒロインをアメリカ出身で真の強い革新的な女性像として打ち立てているところからもわかる通り、ボガードに憧れたベルモンド以上にゴダール自身が、アメリカへの憧れ、引いてはアメリカ映画への敬意を抱いており、『カサブランカ』引用の原点もそこにあるように思えてくる。
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 それにしてもハンフリー・ボガードは思ったより背が低く、思ったより口数の多い男であったが、それでも滲み出るあのカッコよさは不思議だ。クラーク・ゲーブルのよさはわからないが、こちらには痺れた。君の瞳に乾杯。
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