HK

汝のウサギを知れのHKのレビュー・感想・評価

汝のウサギを知れ(1972年製作の映画)
3.5
CS番組、町山UFOを録画鑑賞。
ブライアン・デ・パルマ(当時32歳)の商業映画デビュー作品ですが、日本未公開で今回の放送が本邦初公開だそうです。
大企業の若きエリートである主人公が急に会社を辞め、マジシャンになるというコメディ作品。
それもタップしながら手品(シルクハットからウサギ、ハンカチからハトを出したり)をするタップダンス・マジシャン。
しかも場末のクラブやストリップ劇場で。

主人公はトム・スマザースというコメディアンで、ブッシュ元大統領(息子の方)をかなり若くしたような顔つき。
商業デビューの割には、マジック教室の師匠にオーソン・ウェルズ、彼女役には全盛期のキャサリン・ロスと大物が共演してます。

しかしデ・パルマはワーナー側との意見の相違で映画の完成前に解雇され、自分で編集できなかったため自分の作品ではないと言っているとか。
しかし、確かに謎の登場人物が複数いたり、各エピソードの繋がりが不自然だったりしますが、いかにものデ・パルマ・カットもありそこそこ楽しめる作品でした。


※ここから下はネタバレ含みます!

解説の町山氏は本作のラストは『卒業』の感動的なラストシーンへのオマージュだと言っていました。
なるほど、私は『卒業』のむしろ前途多難を思わせるラストに対して、キャサリン・ロスを本作で本当のハッピーエンドにしてあげたかったのではとも思いました。

しかし話は矛盾しますが、デ・パルマは本作のようなラストにしたくなかったのではとも思い始めました。あんな絵に描いたようなハッピーエンドではなく、主人公を消してしまって(もしくはビルから飛び降りて)終わりにしたかったのでは?

なぜそう思ったかと言うと、会社に勝手にラストをハッピーエンドに作り変えられ、これは自分の作品ではないと怒ったR・アルトマン監督の『宇宙大征服』の例を思い出したから。

デ・パルマが自分の作品ではないと怒ったのは、編集権が無かっただけではなく、ラストを勝手に変えられたからという可能性もあるのでは?
もちろん、あくまで想像ですが。
HK

HK