予告篇は劇場で何度もかかっていて、興味を持ってたし、花ちゃんが出てるので観たいと思っているうちに終わっちゃった本作を本日DVDで鑑賞。
予告でもわかるのは、3月の31日分を別の年ごとに描くという構成。
とはいえ、予告では時系列に進むと思っていたけど、時間がいったりきたりするという、さらに凝った仕掛けだったのですね。
これ、題名の「君を愛した30年」が余分だわ。
「弥生、三月」だけだったら絶対に足を運んでた。
副題があるから、ただのラブ・ストーリーかと思って見くびっちゃった。
完全に舐めてました。
これは素晴らしい。
たしかに、高校生から50歳まで同じ役者で、老けメイクもミニマムでしかないところは気になる。
それと、「毎日別の年を描く」というルールだと思ってたので、何カ所か連続して同じ年の出来事を描いているところはルール違反ぽいなと思ってしまった。ただ、それも本作の運び上はある程度やむを得ないかな、とも考えたり。
ただ、そういうことは置いといて、素晴らしかったとしかいいようがない。
本作ではバスを追いかけることを代表に、反復するイメージがいくつも登場する。ちょっとわざとらしいっちゃあ、わざとらしいんだけれど、こういうことできてない映画だってたくさんあるんだから、加点ポイントでした。
私はこの主人公の2歳だけ上。生きてきた時代がほとんど同じ。
なもんで、こんな映画見せられたら、ずっと自分の人生を振り返るしかないわけですよ。
そういう意味では、現在アラフィフの人にこそ、いちばん刺さる作品であろう。
人生、こんなもんですよ。いや、諦念や後悔で言っているんじゃなく、これくらいのことは誰にでも起こり得ます。
離婚した身だし、私の場合は神戸だったけど地震もあった。若い頃に亡くした友もいる。
でもまだ生きてるしね。私の場合は、毎日映画観て機嫌よく暮らしてるし。
選択できなかった選択肢とかタイミング、考えてもしかたがないし。
ま、だからこそ、主人公二人の開かれた未来を提示して終わってくれたことが、嬉しかったですよ。
ラストのミュージカル展開も悪くない。ま、私がミュージカル好きだってのもあるけど。
九ちゃん、この映画が最初に描く年の前年に亡くなってるんだよね。
123便も思い出しちゃった。
あと、花ちゃん。
相変わらず恐ろしい人です。
存在は序盤で消えてるのに、物語の中心にずっと居続ける。
そして、何よりも第三幕のテープ。
あれは、もう他人事じゃない。
私自身が、「止まった時間の中にいる、圧倒的にキラキラした、永久に勝ち目のない存在」に優しく語り掛けられてる。しかも、その内容や口調は途轍もなく優しいのに、それがとんでもない糾弾になっちゃう。
これは号泣でした。
あ、波留ちゃんの嗚咽をオフにしたのは、よかったね。
あそこで号泣されてたら、こっちの涙が引っ込んじゃってたはずよ。
3月31日を残して、エンドクロールになるので、どうするのかな、と考えてました。
「2021年3月31日」なんて出てきて二人の結婚式だったら、ぶっとばしてやろう、DVD叩き割ってやろう(レンタルだけど)と思ってたら、「あれ」でしょ?
DVDの解像度だと最初のショットではネームタグが見えないから、「結婚式もすっ飛ばして、そこ?! なんか、雑!」と思いかけたところに、そうじゃないことがわかり、「あ~、やられた~! そっちね~! しかも、そうだったのだね~!」と脱帽しました。