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コンフィデンスマンJP プリンセス編のtetsuのレビュー・感想・評価

4.3
前年同様、アカペラサークル時代の友達2人と鑑賞。


[プリンセス編]☆

ゲスト:関水渚、柴田恭兵、ビビアン・スー 他
詐欺師集団"コンフィデンスマンJP" の次なるターゲットは、大富豪一族"フー・一家"
欲望渦巻く遺産争いに潜入した彼らだったが、そこには、かつての敵である騙し屋たちが集まってきており……。


[感想]

公開直前の予期せぬ訃報もあり、かなり足どりは重かったですが、結果的に観て良かったです。

正直に言えば、観ている最中にも無意識に複雑な気持ちが込み上げる部分があり、完全に楽しみきれない点もあった*のですが、それでも、あえて公開に踏み切ったこと、そして、良い意味でいつも通りの"コンフィデンスマンたち"が描かれていたことには、映画というメディアの1つのあり方を考えさせられました。
*ただ、傷が癒えていない方は、無理をなさらず、配信・ソフト化・TV放送を待ってもいいとは思います。

そして、製作陣の方々には、しっかりとした休息をとってもらいたいです。

本編の内容は、前作以上という呼び声も納得の出来。
パンフレットの脚本家・古沢さんによるコメントには、前作以上に人間ドラマを描いたと書かれていましたが、それが功を奏した結果だと思いました。


[古沢脚本が見事に合致したシリーズの強み]

古沢さんと言えば、『鈴木先生』、『リーガルハイ』、『デート』といった人気ドラマを手掛け、脚本家として評価されている人物。

しかし、その一方で、彼が脚本を手掛けた近年の映画作品(『エイプリルフールズ』、『ミックス。』など)は、豪華俳優陣をカメオ出演的に大量に投入することで、力技とも言える演出が多かった印象があります。

それ自体は決して悪くないのですが、結果として、それぞれのキャラクター描写が浅く感じてしまうのは、かなり惜しいなと感じていた部分。
(そもそも、2時間で、それだけのキャラクターをしっかり描くことは出来ないのでしょう……。)

ところが、本シリーズの映画版では、ドラマ版で描いたキャラクターたちをゲストキャラとして登場させることが可能になり、まるで、水を得た魚のように面白さが上がったように思っています。

前作しかり、本作でも、これまでのキャラクターが絶妙な配置で活躍し、入り組んでいく物語には、脚本の上手さを感じました。


[前作との違い]

恋愛要素を中心として、最後にどんでん返しを持ってきた前作と比べ、本作の脚本は全体的なテンポが良くなり、間延び感がなくなっていたのも印象的でした。

また、予告編のイメージとは、かなり異なる物語も興味深い。

僕自身は予告を観る際、初見時のことを考え、かなり意識を飛ばしているのですがw、友人が鑑賞後「意外と思っていたのと違った」と言っていたので、それは、一重に予告編の影響が大きいだろうなぁ~と。

確かに「騙し屋大集合」という宣伝とはかけ離れた展開には、観客の多くが翻弄されるかもしれません。

しかし、それが結果として、良い意味の驚きになっているとも思いました……。
(まぁ、それも主人公・ダー子の思惑ということで。笑)


[キャストの使い方]

前作同様、豪華キャストの起用が楽しい作品ですが、本作では、それを逆手にとり、新人女優やほぼ無名の役者が活躍している部分も面白いなぁ~と思いました。

すでに、多くの方が触れているとは思いますが、関水渚さんの名演は必見で、プリンセスが、実は"シンデレラ"だったのではないかとも思わされる彼女の透き通った演技は、本当に魅力的。

また、前作では、竹内結子さんと長澤まさみさんの関係性に、先輩女優→後輩女優へのバトンの受け渡しを連想しましたが、本作では長澤まさみさん→関水渚さんという形でバトンの受け渡しが変わっており、今後の関水さんの活躍に、自然に期待したくなる映画になっていたのも良かったです。

そして、地味にすごいなと思ったのが、これだけ豪華キャストを用意しておいて、終盤でキーとなる"ある男性"が全く有名人ではないところ。

劇中でも、かなり涙腺を刺激する名シーンに、あえて有名人を使わなかったところは、今回の配役における最も偉大な功績だと思います。


[最後に]

何はともあれ、関水渚さん演じるコックリの"マンゴーの下り"が総じて最高だった本作。

確かに、外国人のキャラクターたちの言語問題を『テルマエロマエ』*もびっくりのトンデモ設定で解決するという邦画史に残る大発明など、TVドラマ映画ならではの突っ込みどころはあります。笑

*映画『テルマエロマエ』では、外国人キャストに日本語吹替を被せる手法を採用していた。

しかし、何となく漂う『スティング』っぽさ、唐突な伊丹十三パロディなど、映画ファンにも憎めない要素が盛り沢山な上にホッコリするラストと、それを上回る楽しさがある本作。

是非、TVドラマの劇場版だからとスルーしてしまいがちな映画ファンの方にこそオススメしたい良質エンターテインメント邦画でした。

参考
Official髭男dism - Laughter[Official Video]
https://youtu.be/kff_DXor7jc
(相変わらず、歌詞も含めて、めちゃめちゃ良い曲なんですよね……。)

2020/8/28
#シリーズ:人気ドラマ劇場版 を追加しました。
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