decap

すべてが変わった日のdecapのレビュー・感想・評価

すべてが変わった日(2020年製作の映画)
3.9
老夫婦が人生の決着に向き合うような人間ドラマかと思いきや、娘と孫の嫁ぎ先が狂った家族だったというサイコスリラー展開。
とにかく暴力で支配する狂人(に見える)家族が恐ろしすぎる。ビル役のジェフリー・ドノヴァンのニヤニヤも心底厭だが、敵の本丸を演じたレスリー・マンヴィルが最高に怖い。彼らが集結するこの家での映画史に残る気まずい食事シーンも忘れられない。粗暴な貧困白人を示す「ポークチョップを手で食べる」という演出も最高。

途中でネイティブアメリカンとの接点を描くのは、これが西部劇だからか、とも思ったが、彼らへの同化政策とその傷を表に出し、問い直すべき問題として切り込んだ点で、この物語全てがこの同化政策のメタファーであったと気付く。主人公夫婦の「寄宿学校は卒業したの?」はどの意味で用いたのだろうか。

良質なロードムービー然とした前半から雲行きが徐々に怪しくなり、馬と車、貧困白人とネイティブアメリカンなどが対比され、主人公の過去や銃を絡めたサスペンスへと突き進む。ある種価値観の相違なだけで、身勝手な生き方をした帰結に囁かれる言葉が反復し、アメリカという国を形作る影の部分をむき出しにする。
「人情映画」の衣を着た「サイコサスペンス」の皮を着た「現代西部劇」といった風味で、奇妙だけれどなんだか忘れられない作品だった
decap

decap