「先へ 先へ」
『ジョーカー』で衝撃の演技をみせたホアキン・フェニックスがのびのびと演技している…ように見えてやっぱりそうでもなさそう。
まず体型の作り込みだよね。『ジョーカー』で激ヤセした身体から打って変わって今度は腹が出るまで増量。そして作品のテーマも実にホアキンらしい。本作ではオスカーでホアキンがスピーチしたように環境問題や「世界はこうならなきゃいけない」ということが子どもの言葉として言われる。
まあそれはさておき、マイク・ミルズ監督は『20センチュリー・ウーマン』があまり気に入らず他の作品は観ていない。
ただ本作はかなり気に入った。単に大人が「純粋な」子どもに絆されて終わりではなく、全く逆。「他人を完全に理解することはできない」ということを示す。人は死ぬし、記憶も、地球でさえもいつかなくなるかもしれない。
でも「人を理解しようとすること」はムダではない。人の話に耳を傾け、そして自分を見つめ直す。そして「先へ」と進むしかない。
モノクロの美しい映像がこの作品にはとても合っている。またホアキン演じるジョニーが録音する人であることから、これは映画館で鑑賞する必要がある。
ただあえて言えば終わり方に迷いが見える。確かにどう着地させようか悩む物語ではあるけど、陳腐になる直前スレスレで踏みとどまった感はある。
まあとにかく僕はモノクロ映画ということだと『ベルファスト』よりこっちの方が断然好きだな。
余談だけど、平日の夜のシネコンで小さめのスクリーンとはいえほぼ満席だったのは驚いた。なんでだろ…