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オキナワへいこうのtetsuのレビュー・感想・評価

オキナワへいこう(2018年製作の映画)
3.2
大学の授業にて2回に分けて鑑賞。

大阪府堺市の浅香山病院・精神科病棟に通う患者たちを追ったドキュメンタリー。数十年間、入院生活をしている益田さん(71歳)の「一生に一度でいいから、沖縄へ行ってみたい」という願いによりスタートした患者たちの旅行計画。しかし、いざ計画が進みだすと、益田さんは旅行を反対し始めてしまい...。

説明不足と感じられる部分も多々あったので、ドキュメンタリー作品としての出来には少し疑問も残りましたが、精神疾患を持った方の暮らしや苦悩が分かるという点では、とても興味深い作品でした。

作品は大きく分けて、益田さんの沖縄旅行を巡る前半と、同じく沖縄旅行に賛同した患者・山中さんの退院を描く後半の2部構成。

前半の益田さんパートでは、「なぜ、沖縄旅行を反対するようになったのか。」という核心部分が一切触れられぬまま、終わってしまうので消化不良でしたが、観賞後に小川さん(劇中にも登場する沖縄旅行の支援をしていた方)の解説があり、納得。
本作に登場する多くの精神疾患患者の方は、若い頃から病院生活を余儀なくされており、何事をするにも看護師や医師の許可がいる。
(例えば、食べたいものがあっても、一人で外出することは許されず、誰かに許可をもらう必要がある。)
そのため、若い頃から物事を選択する機会を失ってしまった彼らにとって、決断することは人一倍困難なことなのだと。

正直、この話を聞くまでは全く理由が分からず、自分の想像力のなさに愕然としていたのですが、お話を聞いた後だと、実際に想像力を養うためには、まず色々なことを知る必要があるのだなと思いました。

後半の山中さんパートでは、彼が結婚相手をみつけたことが転機となり、退院に踏み切る様子が描かれていました。

ある程度、年をとったのちの10年という期間だったからこそ退院ができたのかもしれませんが、やはり、それを後押ししたのは愛の力。
退院後、恋人の支えも受けながら、自宅での生活で「自分の物を買いに行けるようになったのが嬉しい。」と言っていたり、彼女やかつての友人と仲睦まじく話をしている姿を見ていると、「精神疾患を抱えている人」という枠組みも関係なく、ただ「一人の人間として魅力的な方」だなぁと思いました。

というわけで、
映画というよりも精神疾患に関わる人達の記録という側面が強かった本作。
単体としては、疑問や気になる部分も出てくる作品かもしれないので、ぜひ、作り手の方と、お話が出来る機会があるタイミングで観てほしい一作でした。

参考
オキナワへいこう / シアターセブン
http://www.theater-seven.com/2019/mv_s0093.html
(さすがシアターセブンさん、丁寧なあらすじを読むと、本編の内容がほとんど分かります。笑)

kokoima
http://kokoima.com/
(出演者でもある小川貞子さんが立ち上げたNPO法人。多くの方が壁をなくして触れあえる地域づくりを目標に、様々な催しを行っています。)

フェニーチェ堺「オキナワへいこう」写真展&上映会&トークセッション 2020年1月13日(大阪府) - こくちーずプロ
https://www.kokuchpro.com/event/aacd6466e6c37df83554442a3ec31c8d
(関西での次回の上映はコチラ。)

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授業メモ

授業:映像で考える現代社会
題材:『オキナワへいこう』
解説:本作にも登場する元看護部長・副院長の小川貞子さんをゲストとしてお招きし、精神医療を取り巻く状況から人と人とのつながりやコミュニティのあり方を考えた。


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