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藁にもすがる獣たちのmaverickのレビュー・感想・評価

藁にもすがる獣たち(2018年製作の映画)
4.5
日本の曽根圭介原作による小説を、韓国の実力派キャストと製作陣で映画化。監督は本作が長編映画デビューのキム・ヨンフン。


章ごとに分かれ、それぞれの物語が進行する群像劇。それがやがてひとつに繋がるという流れは、このタイプの作品にありがちな展開ではある。だがそれが何とも鮮やかであり、卓越した役者たちの演技に惚れ惚れする。『藁にもすがる獣たち』というタイトルは、まさにその通り。人間の卑しさをこれでもかと詰め込んだ生々しさがたまらない。そこの深掘りと表現力においては、さすが韓国映画だなと感嘆してしまう。いつもは華々しい映画スターたちも、作中では最低の姿を見せている。韓国映画のクオリティの高さを存分に見せつける傑作だ。

チョン・ウソン、チョン・ドヨンと、自分の好きな役者が出ていることでも興味があった。この二人の豪華共演というだけでも話題性がある。二人とも韓国を代表するスターで、本作でも存在感抜群でかっこいい。だがそのかっこよさとは裏腹に、人間の浅ましい部分を滑稽なまでに披露しているのが何とも好感を持てる。特にチョン・ウソンの方にそれを強く感じた。彼がこんな情けない男を演じるのも珍しい。内面からにじみ出るかっこ悪さが逆に最高だった。チョン・ドヨンは流石の一言。この人は本当に何でもこなせる女優。悪女っぷりがたまらなかった。ジャケットの姿には惚れ惚れするね。

キャストは他にも、『スウィンダラーズ』のペ・ソンウ、『王宮の夜鬼』のチョン・マンシク、『ミナリ』のユン・ヨジョン、『MASTER/マスター』のチン・ギョン、『コンフィデンシャル/共助』のシン・ヒョンビン、『感染家族』のチョン・ガラムと、非常に多彩で豪華な面子。彼らが織り成す群像劇の生々しい人間ドラマに釘付けだ。

韓国映画お得意の犯罪サスペンスもの。その生々しさに気持ち悪さもあるが、節々に感じさせるユーモアの加減も上手い。緊迫感に息苦しさを感じる部分はあれど、テンポよくスピーディーな展開が爽快でもある。芸術性が非常に高い作品でありつつ、しっかりとエンタメ性もあるのが見事。想像してた以上に面白かった。


金が絡むと人は変わると言うが、この登場人物たちみたいになったらお終いだ。獣にならず、人間でいなきゃね。
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