ちこちゃん

エルヴィスのちこちゃんのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
3.5
才能を飼い慣らすのは難しい。

あまり知らなかったエルヴィスプレスリーを知るには、とても良いドキュメンタリー仕立ての映画でした。

画家や小説家などの芸術家と違って、歌手ををエエンターテイナーにするためには、マネジメントが必要です。歌を届けるためには、この時代は特にイベント会社やレコード会社との交渉が必要で、そのためにはマネジャーがどうしても必要です。そして、絵や小説と違い、より大きく大衆の人気によって評価がなされるので、どのように売り出し、どこで売り出し、どのようにイメージをつけるのか、時代とマッチさせるのかというのがマネジメントに委ねられるのだと思います。

才能があるエルヴィスも、マネジャーであるトム・パーカー大佐がいなければ、伝説の歌手とはなっていなかったのでしょう。あのようにラスベガスでショーをすることが有名にもなっていなかったでしょう。
ただし、このマネジャーをはじめ、エルヴィスを取り巻く人が、自己利益しか考えなかったため、食い物にされていきます。トム・ハンクスがこの悪徳マネジャー役を好演しています。

人は一旦手に入れたものを失うことには、大きな恐れを抱くものです。エルヴィスの場合も、とてつもなく大きな聴衆からの愛=人気を得てしまったので、それを失う怖さから逃れられず、薬に走ります。

エルヴィスの歌と人生を知るには良い映画です。そして、主演のオースティン バトラーが年代ごとのエルヴィスを外見から変えて、素晴らしく熱演しています。歌のうまさも際立っています。そして、憎まれ役であり、ストーリーテラーであり、エルヴィスを死に追いやったと言われて、金銭面での訴訟もされたマネジャーの大佐をトム ハンクスが巧みに演じており、それもこの映画の見どころだと思います。

歌は時代とともにある、ということも、あらためてこの映画を見て、黒人のゴスペルを自分の歌の実家として持つ白人であるエルヴィスがキング牧師やケネディ大統領の暗殺の時代に熱狂的に受け入れられたのがということが良くわかります。

エンターテイメントの難しさや、時代と歌のマッチングについて、いろいろと考えることができる映画です。
アメリカでのマネジメントの難しさがあるように、日本でも、芸能プロダクションが大きな力を持つ、日本特有の歪んだシステムがあるということを考えてしまいました。
才能がある人がその才能を制限なく輝かせることができる仕組みがあれば、、、などと思ってしまいました。
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