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眠る虫のtetsuのレビュー・感想・評価

眠る虫(2019年製作の映画)
4.0
ムーラボで鑑賞。

日常の中にありふれている音楽。
バスを乗り過ごしたギター少女が迷いこんだ不思議な世界...。

終盤に進むにつれ、理解が追いつかなくなる奇妙な物語。しかし、なぜか終わった後には、心地よい感覚に包まれる独特な作品でした。

今年で8回目を迎えたという若手orインディーズ映画監督と駆け出しのアーティストが送る音楽と映画の祭典・MOOSICLAB。
その歴史の中では「音楽とは何か」というテーマに様々な監督が挑んできたとは思うのですが、本作で描かれたのは「環境音」という唯一無二の題材。

日常の生活音を切り取り、創作活動を続けるヒロインを通して描かれた「様々な音」の描写(とりわけ、それを活かした「バスの車内」における一連のシーン)には、いまだかつてない高揚感がありました。

また、これまでの監督の作品では、「植物」や「死」をテーマに描いた作品が多い印象でしたが、今回は新たに「場所」や「記憶」、「音」といった概念が登場し始めたので、今後、この題材をどのように扱っていくのかにも期待が高まります。

正直なところ、奇妙な世界観とシュールなクライマックスには、いまだモヤモヤしているのですが、そんなことを深く考えるよりも、感性を研ぎ澄ませて、繰り返し観ていたい作品でした。
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