ゆめちん

ブラックバード 家族が家族であるうちにのゆめちんのレビュー・感想・評価

4.0
ブラックバード 家族が家族であるうちに

本作はデンマーク映画 "サイレント・ハート" のアメリカ版リメイクで、オリジナルは残念ながら未見。

ある週末、夫ポールと妻リリーが暮らす海辺の家に、娘家族や親しい友人が集まってくる。難病を患い死を覚悟したリリーは、最後の週末を大切な人々と過ごそうと決めていた。

尊厳死がテーマだが、尊厳死を選ぶまでの葛藤を描く訳ではなく、病魔に侵されて不自由な中での決断でもない。死を覚悟する中で、まだ体の自由が利くうちに旅立ちの日を決断し、家族や友人を集め最期の濃密な3日間を過ごすという切り口で展開する。

冒頭、表面上は全く取り乱していない家族や友人だが、この決断に至るまで葛藤を繰り返し、悩み苦しみながらも、リリーの意思を尊重し受け入れたことがひしひしと伝わってくる。

夫と長女は納得し気丈にふるまい、長女の一人息子は当日に聞かされ受け止めきれず戸惑い、次女は母親を思い留まらせようとする。それぞれの気持ちが丁寧に描かれているので、皆それぞれに共感してしまう。

主人公リリーの母親として妻として女性として、最後まで後悔のない人生を送りたいという気持ちが様々なシーンから伝わり、その1つ1つの選択に説得力があるが、ラストのひと悶着に至る選択はどうしても理解できなかった。そのことで作品のイメージがガラッと変わってしまったのが少し残念。

先日鑑賞した "いのちの停車場" とテーマは同じだが、観客に結論を委ね曖昧にする日本作品に対し、しっかりと議論し結論付ける欧米作品。尊厳死問題に対する向き合い方の違いがはっきりと作品に表れるのが興味深く思える。

強くて美しい母であるリリーをスーザン・サランドンが、抑え気味だがその安定感のある演技に引き込まれ、生真面目な長女ジェニファーをケイト・ウィンスレットが感情豊かに演じ切り、物語をしっかりと牽引する。彼女のメガネ姿を初めて見たが、とてもお似合いで役柄にぴったり。
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