みや

デビルズ・ソナタのみやのネタバレレビュー・内容・結末

デビルズ・ソナタ(2018年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

若き天才バイオリニスト・ローズは生後数か月で生き別れた父の死を知らされる。父親はかつてクラシック界で一世を風靡し、突如として姿を消した作曲家だった。彼の遺産を整理するためフランスの田舎町へ赴いたローズは、父親が死ぬ間際に作曲していた「バイオリンソナタ作品54」という楽譜を発見する。楽譜には複数のシンボルが記されており、その一つが置時計の裏面にも描かれていた。マネージャーのチャールズと共にシンボルの謎を解き明かすにつれて、ローズは父の秘密を知っていく。

冒頭から灯油を被って焼身自殺する一人称視点はインパクト大。後半で登場する子供達の顔も気味悪いし、私としては珍しく直接的な恐怖表現を楽しんだ。ゴシック感溢れる屋敷は内装も小物もお洒落で、灯りの配置や光量もすごく考えられていると思う。

高慢で高飛車で、でも繊細な主人公が圧倒的に可愛かった。煙草や酒を当然のように嗜み、明らかに怪しい建物でも一人でグイグイ進んでいく。芸術家らしい強い女の子で好感を持てた。巨大なキャンドルを持ちながら階段を下りる様子は、あまりに大仰な画で思わず笑っちゃう。もっと小さいのあったよね?

禁酒中で薬に頼り気味のマネージャーはローズと真摯に向き合い、一緒に謎を解いてくれる。でも、このマネージャーは本当に味方なのか、亡き天才作曲家の楽譜で金と名声を得たいだけなのか、目的が気になって仕方ない。ローズとは愛人関係なの?父親代わりなの?という疑問も、楽譜の真相と同じくらい気になっていた。前者は金と名声目的だったみたいだけれど、後者は結局よく分からず、ずっと嫉妬心を抱き続けて、そこに愛情は無かったのかな…。

フランスの田舎で発見した楽譜の現物が翌日にはイギリスにいるマネージャーの元に届いていたけれど、可能なの?森の奥の教会にあるはずのテープを屋敷でマネージャーが聴いていたのは、雪が降る夜の中で取りに行ったの?というのがちょっと気になってしまった。
ローズの左ハンドルやマネージャーの表彰状、バーの張り紙など、さりげない描写が状況の説明や伏線になっているのはとても巧い。

タイトルになっているだけあり、最後のバイオリン演奏のシーンは凄く良かった。台詞は無いし、ローズは無表情だし、マネージャーはずっと恍惚としているし、メイン2人にはほぼ変化が無い。
音楽そのものと、音楽に導かれるようにして周囲に集まってくる怪異。だんだんと異界が近付いてくる様子に惹きこまれた。こういう悪魔が実体を持って出てくる系は萎えちゃうことが多いけれど、なぜか今回のは好き。ゆっくり動くからなのか、音楽効果なのか。

本を持っていた偏屈爺さんはやっぱり秘密結社側の人だったのね。薄々想像はしていたものの、ニンマリしちゃった。大きな組織がパトロンとなったローズには、今後もクラシック界で妖しく輝き続けてほしい。
みや

みや