みや

CUBE 一度入ったら、最後のみやのネタバレレビュー・内容・結末

CUBE 一度入ったら、最後(2021年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

謎の立方体【CUBE】に突如閉じ込められた、見ず知らずの男女6人。惨殺されるトラップが発動する部屋を避けながら、己のトラウマと向き合い、本性を剥き出し、知恵を絞って脱出を目指す。本家の監督がクリエイティブ・アドバイザーを担当した世界初の公認リメイク。

本家とは幾分違うところが多く、どちらが良いかは個人の好み次第かな。私は「求めていたものとちょっと違うんだよな~」が正直な感想。比べるものではないのかもしれないけれど、「公認リメイク」を売りにしているのなら比較しても仕方ないと思うし、私はあちらが断然好み。

本性を曝け出して醜く争う従来のソリッド・シチュエーション・ホラーに加えて、自分自身の心の傷と向き合う人間ドラマの要素がだいぶ多い。閉じ込められた6人はそれぞれに罪や暗い過去があるらしく、贖罪を求める『SAW』のテイストがプラスされているのかと思いきや、明確に過去を描かれるのは主人公だけだから不完全燃焼のまま終わってしまった。
精神面を深く描くという繋がりから、自分の嫌な過去をみんなと一緒に観なきゃいけない部屋が斬新で面白くて絶対に嫌。

個人的にはキューブ自体の謎や脱出方法、それに伴う人々の諍いが主軸になる方が好きだけれど、日本だとそういった作品は喜ばれないのだろうか。スプラッター度合いも低めで、もっとぐっちゃぐちゃのグロを見てみたかった。面白いトラップは幾つかあり、音を出さなければ通れる部屋のヒリヒリ感が好き。
ずっと緊張が続く中でも、ちゃんと緩急があって脳が飽和状態にならないのは良かった。感動を誘う壮大な音楽やポップなED曲にはどうしても苦笑いしてしまう。
疑問や不満は色々あれど、結末自体は『CUBE』らしくて良き。

私でも知っている役者さんが何人もいて、本家を観たことのない人たちが役者さんを通じて初めて『CUBE』シリーズに触れてくれたんじゃないかと思うと、シリーズファンとしては嬉しくなっちゃう。
本家3作に比べて美男美女が揃っているし、なかなか誰も死なないのが途中から面白く感じてしまった。推しの俳優さんには一分でも多く映っていてほしいよね。分かるぞ。どんどん狂気に堕ちていく好青年の越智さんが私はお気に入り。

希望と絶望が交互に訪れることで、熱くなって突き進む人、冷静なまま変わらない人、心が壊れて病む人に少しずつ分かれていく。こんな極端な場所でなくても、日常で生じる可能性のある危機的状況に陥った時、他人を慮れる人でありたいと切に思う。体力も知恵も勇気も無い私だからこそ、優しさだけは持ち続けたい。
みや

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