みや

ウィッチのみやのネタバレレビュー・内容・結末

ウィッチ(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

17世紀ニューイングランド。敬虔なキリスト教徒の家族が村はずれの森へ引っ越したが、末っ子の赤ん坊が行方不明になったことから家族は長女を魔女だと疑い始め、次第に一家全員が疑心暗鬼へ陥っていく。

オカルトホラーと思いきや、家族がどんどんおかしくなっていく狂気系ホラーだった。ガチ魔女もいるにはいるけれど、メインとなるのは家族の疑心暗鬼。その心理描写が凄く上手くて面白かった。
宗教に盲目的な両親という、日本の作品では描かれることの少ない毒親の一つの形が興味深い。集団から放逐され、教育を受けられず、食べ物に困るような生活。宗教は幸せになるものであって苦しむためのものではないんじゃない?と私は思うが、映画や小説で見るキリスト教徒は好き好んで茨の道を選んでいる気がする。
夫婦の言い争いや、この親に育てられてしまった子供達の言葉を見ると、宗教って本当にその人ごとに都合よく解釈できるものだよなあと感じる。私からするとくだらない。でも、彼らにとってはそれが全てで、もうそれだけで既に彼らは狂っているように思えてしまった。

長女のトマシンと長男のケイレブがとにかく不憫。トマシンがいないいないばあで顔を覆っている間に赤ちゃんがいなくなる場面は衝撃だった。これは確実にトラウマになるよ。それでいて家族からは魔女だと疑われるんだから、観ていて可哀想で仕方ない。
トマシンが母親を殺さないといけない場面は、毒親と毒親に支配された娘の構図が二人の表情から伝わってきて、目が離せなかった。こんなにまでされても母を愛するなんて異常だ、と感じてしまうが、ここまでの家族の関係性を見ると納得できてしまうから凄い。

トマシン役の子は綺麗と可愛いを併せ持ち、画面に映っているだけで幸せだったが、ケイレブ役の子は演技が素晴らしかった。特に憑りつかれた後、布団の上での狂った叫びは彼の独壇場で圧巻!
幼い双子は終始イライラさせてくれた。早く消えてほしいと切に願っていたけれど、この二人も疑われる対象になるとは思ってもみなかったから衝撃。狂気の根深さに一番震えた瞬間かも。

母を自らの手で死に追いやり、家族を全員喪ったトマシンは、本当の魔女になる。魔女たちはトマシンを魔女にするために、家族を疑心暗鬼に陥れたのだろうか。そこまで計算しているのだとしたらめちゃめちゃ賢くて尊敬する。
魔女になったトマシンには自由を謳歌し、幸せになってほしい。
みや

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