えいがうるふ

パピチャ 未来へのランウェイのえいがうるふのレビュー・感想・評価

-
すんなり感動はできず、だからこそとても考えさせられた。
確かに主人公の勇気と行動力は素晴らしいが、序盤での描写から若気の至りそのもののようにも見える、かなり無謀で強引なその言動に感情移入することが出来ず、ハイテンションに気勢を上げて盛り上がる女性たちの姦しさに疲れてしまった。

少なくとも同性として、日頃から社会の抑圧に少なからず反発を感じる立場のはずなのに、何故私は彼女らに素直に共感の涙を流せないのだろう?
観終わった瞬間は頭にたくさんの???が浮かび、エンドロールを眺めている私の眉間にはきっと深いシワが寄っていただろうと思う。

間違いなく私自身の、現地の文化や価値観宗教観と彼女たちが置かれている状況の凄まじさへの理解は足りていないのだが、命をかけてもやりたいことがあるならばこそ、もう少しうまくやる方法はなかったのだろうか?ああするしかなかったのだろうか?という苦々しい気持ちが残ってしまった。当たり前に命の危険と隣り合わせの内戦状態の生活で、あえて危険を冒してまで彼女が実現したかった夢が何だったのか、最後までうまく掴みきれなかった。

デザイナーになるのが夢ならば、あまりにも障害が多く危険な故郷に留まるより、フランスに亡命したほうがいいのは明らかだが、彼女は留まることを選ぶ。では、彼女はその有り余るエネルギーでファッションを通じて祖国を変えたいのだろうか。そんな政治的な野心までは感じない。ファッションショーを決行することが彼女にとって何を意味するのか、恐らくはとにかく自分が今いるこの場でやりたいことをやる自由を得ること、そして自分を取り巻く社会の不条理に反発したいという思いが一番強いのではなかろうか。それはきっと万国の若者の共感を得られる普遍的なものだろうが、彼女たちのやり方はあまりにもストレートだ。目的に対してあまりに視野が狭くやり方が短絡的で、自分や仲間の命をみすみす危険に晒しているような気がしてならなかった。

とてもすぐには答えが出ないので、とりあえず感じたことをメモしておく。
もしかすると、アルジェリアに限らず、立場の弱い者が政治的社会的圧力や暴力に晒され苦しんでいる土地の多くで、未来を夢見る若者の内から自然と湧き上がる反発力や意思の力を、為政者や宗教リーダーが権力や暴力や因習でねじ伏せ、視野を狭め思考力を奪うことで結局は変革の実現を難しくしている、その閉塞構造をそのまま描いた作品だったのではないだろうか。
そして、自らの信条に従い、策を練るよりひたすらストレートに目的達成を目指してしまうような、死をも恐れぬ自らの大義への盲目性もまた、宗教が生活の全てに影響する文化でこそ強固に培われるものなのかも知れない。
・・・などと思い至り、ようやく自分なりに少しは理解ができたような気がした。

それにしても私はまだまだ勉強が足りない。遠い国の事情だからと知らぬ存ぜぬで過ごしてしまっていることが多すぎる。