何だかよくわからないけれど、でも悪い映画ではないな、と思った……そこから考えがぜんぜん発展していかないので困る。スケールの大きさで勝負する社会派の映画ではないようだ。それでいて、「本当はプロ意識が高い写真家の魂の再生」を描いたヒューマン・ドラマに収斂していくとも思わない。彼が持ち合わせているはずのトラウマを克服する話として読むのは無理があるが、オリエンタリズム丸出しで水俣病に迫った話ではないようでもある。ではいったい何なのか？ わからない。当てずっぽうで言えば多分これはそうした様々な具材の旨味を五目寿司よろしく盛り込んでしまったがゆえに生じた混沌とした印象なのだろうと思う。だから褒められるシロモノではない……が、駄作や愚作の類としても落ち着かない。映像はきれいだし、志もさり気なく高い。製作者たちの伸び伸びとした制作態度が伺えるがゆえに「困った映画だなあ」と呟くしかない。
