撲殺

Zolaゾラの撲殺のレビュー・感想・評価

Zolaゾラ(2021年製作の映画)
3.2
ケツ!ケツ!チンコ!ケツ!!!な作品。

ウェイトレス兼ストリッパー業彼氏を養っている黒人女性ゾラが、店で出会った白人女性ステファニーに誘われて、彼女のボーイフレンドとその同居人と共に大金が稼げるフロリダ旅行へ旅立つも、そこで地獄を見る話。

正直、怖さというよりも全く知らない人たちの中に放り込まれて気づいたらどうしようもないことになっていた時の無力感・疎外感みたいなものがキツい。
少しネタバレになってしまうが、ゾラに味方はいない。本当にどうしようもなく、為す術なく成り行きを見守るしかない不安感はとてつもなくスリリング。

あと見せ場としてはやはりセックスワークの不快さ、全く知らない男女の絡みの気持ち悪さが大きい。

途中ステファニーは男に買われる。後述のネタバレ項目で詳しく話すが、そのシチュエーションというか、設定がまぁ生々しい。
しかし嫌悪感を露わにするゾラを尻目にステファニーは淡々と事をこなす。なんでこいつこんなに平気なんだ!?という気持ちが沸きあがるシーンだ。

また、ステファニーとその彼氏デレクのイチャイチャシーンが気持ち悪い。とんでもないことになっているのにお前ら呑気だな…と。感情移入ができない奴らのイチャイチャって気持ち悪いですよね。

ストーリーは今ひとつ盛り上がりに欠けるけれど、実話を基にした作品のようなのでかえってそれがリアリティをもたらしているような気もする。

エッチなケツが観たい人は劇場へ急げ!!!




【以下ネタバレ注意】

考察有り

本当に良い意味で酷い。ゾラちゃん以外まともなのが1人も出てこない映画です。

まずゾラちゃんはステファニーにストリップクラブでダンスをするだけの旅だと騙され売春ツアーに連れ出される訳なんだけれど、帰ろうとしたゾラにステファニーがかけた「娘のためにお金が必要なの…助けて…」って言葉、嘘ですよねこれ。

ステファニーとX(名前忘れた)はお金を稼げればなんでもいい訳だし、何ならステファニーはXに身も心も支配されてる感じ。
デレクさん、ご愁傷さまです。

家にポールダンスのポールを設置してダンスの練習に励む真面目なゾラちゃんが、暴力とセックスしかないクソ環境に飛び込まされるのは本当に観てて最悪の気分になれます。心底同情。


ただ、この映画で興味深いなと思ったのはアメリカのセックスワークと性文化ついて。

ステファニーは高校のものと思わしき制服を着て客を取るわけですが、ゾラの機転によって制服姿の写真をアップした瞬間に高額でも客がバンバン入るのは正直感心しました。
アメリカでも高校生みたいな所謂援助交際的なものは根強い人気があるんですかね。
来た客全員社会的に負けてそうな奴らばかりなのも良い。

アメリカならではかなと思ったのはステファニーは最初の客から年齢を聞かれた時の「大人よ」というセリフ。
アメリカでは多くの州で成人年齢が18歳となっているため、大人=10代だけど18歳以上 という証明なのかなと。
児ポとかに超厳しいアメリカならではやり取りなのかなと思いました。

日本では歌舞伎町の所謂トー横と呼ばれる場所での未成年売春が問題となっているようですが、日本で未成年を買うような奴らは年齢が低ければ低いほど興奮してそうですよね。
少なくともステファニーがされてたような質問の仕方はされなそう。「何歳?」「16です」「(生唾ゴクリ)」みたいな。経験として1度未成年売春の現場に同行して見学してみたいです。死んでも買いたくはないですけど。

あと結構人種差別的な表現は多かったですね。黒人はいらないとゾラちゃんがぶたれたり。
個人的にはステファニーよりもゾラちゃんの方が全体を通して露出激しめ・セクシーめな服装なのが気になりました。

邪推かもしれないけれど、肌の色で白人に人気で負けている分、セクシーさでカバーするしかないのかなと…ゾラちゃんが露出を抑える衣装を嫌がったりしてたのは、黒人はよりセクシーさとダンスで戦う必要があるからだと自覚しているんじゃないでしょうか。
だからあんなに練習熱心なのかも。

所々SNSの送信音っぽい音がするのはこの映画ならではですね。あ、今ツイートしたねみたいな。分かりやすくて良いと思いました。

正直盛り上がりには欠けると思いますし、脚色次第ではもっとヒットを飛ばせる題材なんじゃないかなと思います。
けれど恐らく過度な脚色が入っていないからこそ、あの生々しくて重い空気感が出てるんじゃないかなとも思います。途中途中のゾラの語りが無かったら重すぎて観れたもんじゃないでしょうしね。

とにかく嫌な映画でしたが、案外スルスル観れてしまうテキーラみたいな映画でした。
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