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83歳のやさしいスパイのHKのレビュー・感想・評価

83歳のやさしいスパイ(2020年製作の映画)
3.5
南米チリ出身の監督による風変わりなドキュメンタリー。
「80歳から90歳の長期出張が可能で電子機器を扱える方」という求人広告に集まった高齢者の中から83歳の主人公セルヒオが選ばれるところから映画は始まります。
募集はある探偵事務所のもので、ミッションは、依頼主の身内が入所する老人ホームに入所者として3カ月間潜入、虐待は無いかなど日々の生活状況を密かに調べるというもの。

ところが応募者の皆さんは年齢だけは条件を満たしているものの、スマホの操作もおぼつかない人ばかり。
セルヒオも盗撮用のペンやメガネといったスパイ・グッズをうまく使いこなせず、暗号も覚えられず、写真を見せられたターゲット(依頼主の母親)すら特定できない始末。

似た人が4人いてどれがターゲットかわからないと言うセルヒオの報告に笑ってしまったものの、実は私も写真を見たのに特定できず。人のことは笑えません。
だって白髪のお婆さんばかりで皆似ているんです(←失礼?)。

そして男女比率は男性4人に女性40人で、平均寿命の差を歴然と見せつけられた思い。
で、80~90代とは言え女性ばかりですから、新しい入所者の主人公はすぐに噂の的。
しかも情報収集のため皆に積極的に話しかけるためあっという間に人気者でモテモテに。
他の男性は皆に飽きられたのか(←失礼?)ほとんどクローズアップされず。

本作では、ホーム内で盗撮しつつスパイ活動(?)をしているセルヒオ自信を撮影チームが盗撮しているわけですが、えらく自然に撮れてると思ったら、映画の撮影チームは事前に老人のドキュメンタリーを撮る名目でホーム内を自由に撮る許可を取っており、セルヒオの入所前からホームの人たちと馴染んでいたとか。

しかし、本来のミッションを忘れ完全に脱線してばかりのように見えたセルヒオのやさしさ故の言動は、最終的にある結論に我々を導いてくれます。
ただのお笑い作品かと思わせながら、この展開はさすがアカデミー賞ノミネート作品。

このマイテ・アルベルディという女性監督の新作は、アルツハイマーを発症した夫を妻が支えている夫婦を5年間に渡り撮り続けたドキュメンタリー「The Eternal Memory」で、もうすぐ公開のようですが、こちらもちょっとだけ興味が湧きました。
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