踊る猫

監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影の踊る猫のレビュー・感想・評価

4.5
もしかすると、核の脅威に匹敵するものとして私たちが使うソーシャルメディア、あるいはインターネット全般は批判的に捉え直されてもいいものなのかもしれない。ひとつひとつの問題提起はなるほど何処かで提起されたもののようにも思われたが、それらを纏めて腕のいいDJがミックスする如く重大な一本の問題提起として成立させており、飽きさせない。学校や家庭で隣り合わせにリアルで座る人よりも、スマートフォンの向こうに居る他者(あるいは、アルゴリズムそのもの)に支配される悲喜劇。それはしかし、陰謀論に流されて身を滅ぼす嗤えない茶番劇に陥る恐れもあるのだ。この地獄は、しかしユーザー自身が望んで作り上げたものでもあり得るからクセモノ。登場する識者たちは悲観的な事実を語るが、しかし一方では極めてリアリスティックに楽観主義を語り現実的な処方箋を提示する。ユーザーが愚かだからこうなる、という安直な自己責任論に持っていかないところが好ましい。
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