ハシビロコウ

泣きたい私は猫をかぶるのハシビロコウのネタバレレビュー・内容・結末

泣きたい私は猫をかぶる(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

主人公がある体験を境に別の視点から世界を見る事ができるようになる、という話に共感できるかどうかは、自分の場合はその体験以前の主人公の心情に共感できるかどうかによる。
で、この映画、ムゲが感じているムカつきにかなり共感できるから好き。
あえてコミカルに描かれてるから解りにくいけど、ムゲの世界観は、好きな男子との結婚=今いる環境からの脱出というひどく殺伐としたものだ。
それは仏の糸にすがるようなもので、ムカつきに共感できる分、その痛々しさもよくわかる。
だから、中盤まではすごく切なくなってしまう。

あと、ストーリーの構成では、ムゲと入れ替わる猫を単なる悪役というかいたずら猫的なキャラにしないで、ムゲと対等な立場を与えたのがうまかった。薫本人を語らずに、薫の周囲を語ることで、キャラではない薫の人間性に説得力が出てるし、後半の展開をポジティブなものにする仕掛けになってる。
それに、主役の3人がちゃんと、「何かを失った時にその大切さに気付く」というテーマで結ばれてるのもとっちらかってなくていい。

ヨルシカの主題歌は、エンドソングの2曲がめっちゃいい。
エピローグが流れてる間はちょい暗めの曲なんだけど、象徴的な最後のシーンでは、反対に心が弾むようなイントロが流れる。
この対比にはグッとくる。
歌詞は本編とあんまり関係ないのにやたら映画にあってる主題歌ってあるけど、そんな感じ。

そういえば、旧ドラの映画の主題歌はそういうのが多かったなぁ~。歌詞は映画の筋と直接関係ないんだけど、言葉の根源にある感情自体は映画の中に出てきていて、その絶妙な結びつきが泣けるんだよなー。