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佐々木、イン、マイマインのkoyaのレビュー・感想・評価

佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)
4.5
佐々木、面白い事言って笑わせてよ
佐々木、馬鹿馬鹿しいことやって笑わせてよ
佐々木、慰めて励ましてよ
佐々木、一緒にカラオケやろうよ
佐々木、佐々木、佐々木・・・・・・

高校生くらいの時、一人くらいいたお調子者の佐々木。
周りにはやし立てられるとすぐ服を脱ぐ。
特につるんでいる多田、木村、悠二(藤原季節)と4人で行くバッティングセンター。彼女もできずなんともだらだらした日々を過ごす男子高校生4人。

だらだらした関係だから卒業してしまえば「時々思い出す友人」
そして、悠二は佐々木の言葉「できるからやるんじゃなくて、できないからやるんだよ」に背中を押されて上京して俳優の道を選ぶ。

しかし、実際は全く売れずアルバイトをしながら舞台に立つ日々。
同棲している彼女とも別れることになったけれど彼女は家を出ずだらだらと同棲生活を続けている。
年も20代後半、27歳になっている。
思い出されるのは高校生の時の馬鹿馬鹿しくもだらだらしていたのが許されていた学生の時。

熱い演劇論をふっかけられてもただただ死んだような目をして、日々をやり過ごしている。
藤原季節の「死んだ目」っていうのが説得力あって、やる気ない、先が見えない、悩んでいるのかもわからない、灰色の日々を表情で見せる。

それでも、彼女との関係は終わりだというと安易に女遊びしろという友人には
「セフレなんて汚い言葉を俺に投げつけるな」
と毅然として言うプライドもあります。

木村と多田は会社勤めをして、はたから見ると堅実、まとも。
でも、佐々木はパチプロ、悠二は中途半端な俳優志望。
佐々木は悠二と再会したときにパチンコ屋でぽつりと将来の不安を話す。
何も言わないけれど悠二も同じなのです。

決してキラキラした楽しい青春ではなかったけれど、どこかなにかが許されていて、何よりも佐々木がいつも笑わせてくれて、からかって楽しくて・・・・・・しかし、佐々木も実は家に父親が帰ってくるのはたまにでほとんど一人暮らし、悠二も祖母と2人暮らしという家庭的には親の愛情不足なのですが、佐々木は何よりも同情されるのが嫌い。

いつも笑われていたい、同情なんて欲しくない、誰かを励ましていたい、誰かから励まされたりなんか恥ずかしい・・・・・そんな佐々木がぽつりという
「彼女、欲しいな」

そしてカラオケ店での出会い。
でも哀しい佐々木は「恋人」には認定されない、結局誰にとっても「いい人、いい奴」

なんとも煮え切らない日々をなんとかしたい悠二。
この2人、実は境遇がよく似ています。
俳優を目指すだけあって悠二は見た目がよくて彼女も出来る。
でも結局、破局してなんとか舞台にしがみついている状態。

そんな悠二を高校卒業しても誇りに思い、自慢していた佐々木。
そのことを後から知って、佐々木の情の厚さを思い知る悠二たち。

映画の後、頭の中に佐々木がいる。佐々木に呼び掛けてしまう。佐々木を思い出してしまう。そして最後のはっちゃけぶりに泣き笑いしてしまう。

小さな映画だけれども丁寧で繊細な映画。
我がココロの映画。
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