Sari

国葬のSariのネタバレレビュー・内容・結末

国葬(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

鬼才セルゲイ・ロズニツァ監督の代表作。
30年間ソ連の最高指導者として君臨したヨシフ・スターリンの国葬をおさめたドキュメンタリー。

モスクワ郊外で発見されたスターリンの国葬を捉えたフィルムは、総勢200名のキャメラマンが撮影したものだそう。フィルムのカラーとモノクロのカットを交互に、国葬で演奏したクラシック音楽をバックで繋ぎ、意外なほど見やすいドキュメンタリーとなっている。プロパガンダによる構図もきっちりとした正式な映像なのだが、現代に力強く訴えかけるドキュメンタリーとして再構築するロヅニツァ監督の手腕が見事である。

厳かな国葬のスケール感の大きさと、赤と緑で統一された式典の装飾に目を奪われる。
モスクワに安置されたスターリンの亡骸がはっきりと映されている。やがて赤い棺で運ばれるが、頭部のみ透明で遠くからでも顔が確認出来る。政府首脳のスピーチ、スターリンの死を嘆き悲しむ幾千万人の国民の顔が鮮明に次々と映し出され、スターリンへの過剰崇拝が社会主義国家の真実の姿として浮かび上がる。スターリン死後、次期ソ連最高指導者フルシチョフによるスターリン批判を受けて、国民は驚愕。愛国主義教育、つまり洗脳とは恐ろしいものである。

◾️ヨシフ・スターリン(1878.12.21-1953.3.5)
ウラジーミル・レーニンの後継者。否定的な意見が浸透した人物ではあるが、肯定的な評価も多い人物であることも確かである。スターリンが政権を握っていた頃、ソ連は第二次世界大戦に連合国として参戦し、共産主義国家の中で数少ない発展を遂げる。言い換えれば能力のない指導者ではなかった。しかし、発展の過程でスターリンが犯した悪行は計り知れない。権力を握ったスターリンは、すぐに金持ちの農夫たちを逮捕し、彼らから奪った土地や家畜を没収する。逮捕された人々は収容所に閉じ込められるか処刑された。貧乏で土地のない住民は国家の農場で働かされた。農業集団化=できた農作物は全て国家に納めさせる社会主義国を体現したスターリンの強圧的な政策には反発が当然強く、暴動が発生するが、スターリンは武装した党員と警察を使い暴動を鎮圧する。その頃ホロドモールと呼ばれる人為的な大飢饉が発生し、ウクライナを始め1500万人もの住民が命を落とす。やがて政治弾圧として大粛清を行う。スターリンの反対派は権力者から住民まで関係なく有罪となった。1937年〜1938年の僅か一年間で134万人以上が有罪判決を受け、約半数が収容所へ送られ、約半数が死刑となった。

2023/05/31 U-NEXT
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