群青

Swallow/スワロウの群青のレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
3.7
異物を飲み込む病に侵され苦悩する女性の話。


っていう簡単な話じゃなかったよ、クソッタレ男!笑


要は金と名声を得た代わりに全てをコントロールされた女性の戦いの話だった。
透明人間の主人公があのまま結婚していたら、と思ってしまったよ。


とりあえず金持ちの社長の息子だっただけで自動的に金持ちになっているだけの息子と結婚してしまった主人公。
恐らく最初はマジで彼となら素晴らしい結婚生活が待っている、と思っていたのであろう。色々なことが起きてもちゃんと夫を信じている。

しかし義理の父は自分を世継ぎを産む女としか思っていないし、義理の母も女性はそういうもんなのめ受け入れなさいという感じで取り付く島もない。
しかもこいつら、全然主人公の話を聞かない。ところでと言ってばっさり話を変える。あんまりだ。

彼女は夫の料理とスマホでアプリをするくらいしかやることがない。アプリの効果音が虚しく豪邸に響く…
ベランダから外を眺める彼女はまるで籠の中の鳥。カメラアングルもきっちり彼女が家の中で一人中央に位置付けられている。美しくも無機質…

ことが起きても彼女はコントロールされる。プライベートはバレバレ、カウンセラーの情報も筒抜け。私には何ができるんだ、途方に暮れる。ここで出てくるとある夫の友人がめちゃくちゃクソ。というか夫がクソだからこういう友人しかいねえんかな、って思えるくらい。
ハグを要求してくるんだけど、それがまずキモいしその後別のタイミングで彼がしているのを観て唖然。そのクズな要求でさえ自分とは関係なかったという落差。クソすぎる。


ストレスに溜まらず彼女はトイレで画鋲を飲み込んでしまう。
色々な心理があるだろうが、彼女にとって飲み込むというのは自分の中に入れること、つまり腹の中だけは自分だけがコントロールできる部分ということ。
何もかもコントロールされてしまう彼女がそれでも自分でコントロールしたい、ということで取ったのがスワロウだったと解釈した。
場所がトイレなのもそこが自分に残されたスペースだった、ということだろう。

というかトイレがすげえ重要。
彼女がある行動に移すのもトイレ。なんならラストも…

ここはすげえショッキングだしいまだに整理がついてない。
彼女が取った行動は同じ女性からでもそれはいくらなんでも、と思えるかもしれないし、別の女性からはこれから私の人生は始まるんだ、という高らかな宣言とも取れると思う。
その証拠にそしてその後もカメラは動かずトイレを撮り続ける。
まるで今も私たちはここで戦っている、というのを示しているような…

完全に虚をつかれたような不思議なラストだった。

主人公の選択だってどっちが良いか悪いかなんてゴールできない。ただ一つ言えることは主人公は自由を自分で選んだということだけ。

彼女を責めることは他人にはできない。自分を責めていいのは自分だけなのだ。
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