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護られなかった者たちへのろいろいのレビュー・感想・評価

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
3.6
💠favorite line💠
"護られなかった人たちへ。どうか声を上げて下さい。"

🎞️catch phrase🎞️
『10年目の殺人――罪を犯してまで、護りたかったものとは。』

🎞️story&information🎞️
全身を縛られたまま“餓死”させられるという不可解な連続殺人事件が発生。
捜査線上に浮かび上がったのは、過去に起こした事件で服役し、出所したばかりの利根という男。
刑事の笘篠は利根を追い詰めていくが、決定的な確証がつかめないまま、第三の事件が起きようとしていた。
なぜ、このような無残な殺し方をしたのか?利根の過去に何があったのか?
さまざまな想いが交錯する中、やがて事件の裏に隠された、切なくも衝撃の真実が明らかになっていく――。


監督は瀬々敬久。

原作は中山七里の長編推理小説・「宮城県警」シリーズの第1作。
時代設定は東日本大震災から9年後に変更されている。

🎞️review🎞️✐✐✐✐✐✐
2021年に上映されたサスペンス作品。

東日本大震災後の復興が進む仙台で発生した連続殺人事件を巡り、
2017年12月の時点で受給している世帯が全国で164万世帯あるという生活保護の実像と生活保護制度の欠陥に迫る社会派ミステリ作品。

宮城県警捜査一課の刑事と元模範囚2人の視点で物語は並行して進展していく。

まずはじめに、本作は福祉課で働く役人を否定するようなものではありません。
福祉課で働く役人は自分の仕事をこなす一方で、生活困窮者は色んな事情を抱えながら生きてる。
ただそれだけです。
セーフティネットにも限界がある。では"どうあるべきか""どうすべきか"を問題提起している作品となっています。
なので”中立性に欠けてる”と批判をしたい人の気持ちは分かるけどすべきではない。
そもそも
・連続殺人
・生活保護の問題
を別々に捉える必要がある。

そんな本作は、
社会派ドラマとしても、ミステリーとしても秀作。
生活保護の現状の問題と貧困の現状が良く描けている。

不正受給をする輩と、本当に必要な人に行き渡らない不条理。
国が予算のために生活保護受給者数の調整や申請を却下する現実。
生活保護を受けることに後ろめたさを感じる老人たち。
そして、生活保護を受けれたとしても残る貧困の連鎖問題。

東日本大震災というセンシティブな設定をわざわざ使用する必要があったかは疑問だけど、
生活保護受給者が増えた状況と厳しい現実を伝えるのには致し方ないのかもしれない。

役者の演技は文句なし。引き込まれる。
眼光鋭く、心を閉ざして尖った青年を熱演した佐藤健。
過去の傷がセリフや立ち居振る舞いに見え隠れする刑事を演じた阿部寛。
2度も親を失ったからこそ、護られなかったものたちを守りたい一身に生きている女性を演じた清原果耶。

社会派ミステリが好きな人はぜひ見てみて欲しい。

以下余談。
・日本の生活保護制度に対する不満とか国連に対する不満とかが評価に現れている人が見受けられるけど
映画の評価と現実への不満を一緒にするのは違う。
・"殺人の動機"がわからないのなら、理不尽に「自然に殺された」のと「人に殺された」違いを考えてみたらいいのかもしれない。
制度だからしょうがないと決めつけている人、自分・身内が同じ立場でも同じことが言えますか?
・問題提起が主題の作品なのに"答えが無い無責任作品"と言う人もいるらしいけど、答えが出ないから問題提起してるのでは?

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story:amazon prime参考
information:Wiki参考
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