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北海ハイジャックのtjZeroのレビュー・感想・評価

北海ハイジャック(1980年製作の映画)
3.6
『スペクター』の公開からもう3年…ボンドマニアのみなさま、いかがお過ごしですか?

新作への渇きというか、ボンド熱を冷ますため、007における”第三の男”ロジャー・ムーア主演の本作を観てみました。

製作は1979年、『私を愛したスパイ』と『ムーンレイカー』の間の時期、つまりムーアの007が人気最高潮の頃なのでむしろ、ボンドとは正反対のキャラクターに挑んでいます。

ヒゲ面で、スコッチをラッパ飲みする野卑な男。女嫌いで猫好き、ネコ柄の刺繍を編むのが趣味…というアンチ・ボンドが極まったようなキャラであります。

ただこの主人公の職業は、潜水工作隊の隊長なので、やってる事はほぼ、ジェームズ・ボンドと同じ(笑)。
北海油田のプラットフォームを占拠&爆破しようとする、テロリストたちに立ち向かいます。

007のスモール版みたいなシブいアクション映画なのですが、捨てがたいのは、イギリス映画らしい海洋冒険モノのスピリットが感じられる所。

元々英国は、国土が狭く、資源に乏しい島国だったので、大航海時代から世界各地へ進出していくことに積極的でした。

そんな風土から、冒険ロマンが育まれ、海洋冒険小説がたくさん生まれています。
『宝島』、『ロビンソン・クルーソー』、『ガリヴァー旅行記』、『バウンティ号の反乱』、『蠅の王』、『海の男/ホーンブロワー』シリーズなどなど、数え切れないほどです。

一方で英国は、その資源の乏しさから、食料でもエネルギーでも世界を動かすことは出来ず、代わりに情報戦で他国を支配しようとしました。
そのため、スパイ活動、すなわち諜報部の充実ぶりが世界屈指のレベルとなりました。
そこから、ジョン・ル・カレやグレアム・グリーン、イアン・フレミングといったスパイ小説の名手が登場してくるのです。

フレミング原作による007シリーズの映画化で主役を演じたロジャー・ムーアが海洋冒険アクションに挑むという事で、いかにもイギリス映画らしいエッセンスが詰まっています。

英国が情報で世界と渡り合ったように、同じように資源の乏しい日本は技術力で生き抜いてきました。
そんなソフト面で勝負する共通点で、我々はあの国にシンパシーを感じてしまうのかもしれません。
20世紀以降も、この両国はソフトを世界への”売り”にしています。
英国はロック(ビートルズ、ローリング・ストーンズ、エリック・クラプトン、デヴィッド・ボウイ、クイーン…)、日本はアニメーション(手塚治虫、宮崎駿、高畑勲、細田守、新海誠…)が”主力商品”なのでしょう。
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