たけちゃん

ザ・ファイブ・ブラッズのたけちゃんのレビュー・感想・評価

ザ・ファイブ・ブラッズ(2020年製作の映画)
4.2
アメリカは俺たちに借りがある!


スパイク・リー監督 2020年製作
主演チャドウィック・ボーズマン


なんと、衝撃😱
チャドウィック・ボーズマンが大腸癌のため、昨日、亡くなられたそうです。
驚きました。
もう、かれこれ4年ほど闘病していたそうで、そうなると「アベンジャーズシリーズ」や「ブラックパンサー」に出ていた時は、既に発症して闘病中だったことになる。すごい執念ですよ。


彼のバイオグラフィは、今度、誕生日レビューで取り上げたいと思いますが、とにかく、今日は彼の作品で偲ばせてください😭😭😭







さて、映画です。
チャドウィック・ボーズマンの出演作リストを観ると、最新作がネトフリにありました。
よし、今日はそれだ!と、見始めましたが、監督はスパイク・リーですか?ネトフリ凄いですね。これが劇場公開作じゃないんだから。

ほんと、これは面白かった~。
スパイク・リー監督の映画は、個人的にレビューしにくいんですよね~。昔から黒人の置かれている立場に対する政治的な作品が多くて、僕の理解力の問題か、きちんと受け取れていない気がするんです。
「ブラック・クランズマン」も劇場で観てるけど、未レビューで。面白かったとは思うけど、僕は「グリーンブック」が圧倒的に良かったから、スパイク・リー監督の怒りをダイレクトに受けそうです( ¯−¯ )フッ



今作は、ベトナム帰還兵の黒人4人組が、ベトナムでの忘れ物と言うべきものを探すために、再びベトナムの地を踏む話です。

PTSDを抱えた帰還兵なので、行動原理に腑に落ちない部分があるんですが、それこそがベトナムの過酷さを表しているとも言えます。また、未だにくすぶるアメリカ不信とか、地面に眠る地雷とか、戦争が終わっていないことを痛感しました。



ベトナムでのチームがブラッズ。
リーダーのノーマンがチャドウィック・ボーズマン。
実は、過去の回想シーンでの出演なので、思いのほか出演シーンは短かったんですが、チームの精神的支柱で、唯一、ベトナムで戦死している重要な人物でした。


ただ、ちょっとスパイク・リーにしては真面目で、弾けきってませんが「地獄の黙示録」のポスターをバックに、ベトナムのクラブで踊るとか、メコン川を船で上る時に「ワルキューレの騎行」を使うとか、遊びが過ぎる(ˆωˆ )フフフ…
「ランボー」への悪口とか、経験者が観るとそうなるのか!って事も知りました( ¯−¯ )フッ

また、今まで考えたことの無いシチュエーションとして、キング牧師の暗殺をベトナムで知った黒人たちがいることを知りました。なるほどなぁ。考えてみたら当然なんだけど、そこを繋ぐベクトルが僕には無かった。これって、結構な衝撃でしたよね。
当然、何のために俺たちは戦うんだ!となる。
黒人監督ならではの視点で、とても考えさせられました!そんな諸々で、個人的にはスパイク・リー作品ではかなり好きな方で、とても面白かったです。







ということで、ここからは音ネタ💩ウンチクンです!
なんだか久しぶりの💩ウンチクン。

まず、音楽を担当するのは、スパイク・リー監督作品では、かなりお馴染みのテレンス・ブランチャード。
僕のレビューでは、最近書いた「ハリエット」がテレンス・ブランチャードの参加作でしたが、スパイク・リー監督作は「ジャングル・フィーバー」から「ブラック・クランズマン」に至るまで12作に参加し、これが13コラボ目。お気に入りなんですね。


そして、今作はマーヴィン・ゲイで彩られます。
ベトナム映画ではハード・ロックが使われていることが多くて、それこそザ・ローリング・ストーンズやブラック・サバスなんかをよく聴きますが、どちらかと言うと黒いバンドが多いですよね。ブルースを基調としたロックバンド。

今作は黒人が主演ですから、もっと黒い人選。
それがマーヴィン・ゲイでした!
それも全て1971年発表のアルバム「What's Goin' On」からの選曲。まるで、昔のブラックスプロイテーションの映画のサントラのよう。

60年代にコンビを組んだタミー・テレルが亡くなり、どん底だったマーヴィンが、ベトナム戦争から帰還してきた弟のフランキーからベトナムの惨状を聞き、再び音楽に向かい書いたのが反戦曲「What's Goin' On」です。

そこから作られたアルバム「What's Goin' On」は、ベトナム戦争に対する反戦の意思表示やアメリカ社会の抱える問題を赤裸々に描いた意欲作で、マーヴィンの最高傑作と言われます。
アルバムが、そのまま、この映画のテーマと言うこともできそうですね。


オープニング、モハメド・アリのインタビューの後から流れ始めるのが「Inner City Blues」です。
背景となる当時の映像との親和性も抜群に高い!


ベトナムのクラブで流れる曲だけが「What's Goin' On」以外の曲で、1977年発表の「Got To Give It Up (邦題:黒い夜)」です。ディスコブームの時期に出た作品なので、ノリノリで踊るのにピッタリ( •̀ω•́ )و✧


ベトナムに着いて、ジャングルに歩いて分け入るとき、みんなで歌うのが「What's Happening Brother」です。この曲は、マーヴィン・ゲイが弟のフランキーから聞いたベトナムでの様子を歌ったもので、ベトナムに戻ってきたメンバーの思いを代弁してます。


埋蔵金と共に探していたノーマンの遺骨を見つけた時に流れているのが「Wholy Holy」です。神への愛を歌ったこの歌は、賛美歌のように流れます。


ポールがメンバーと別れ、1人で進む時に歌っているのが「What's Goin' On」です。上手いですね!
俺たちは道を見つけなければ行けないんだ、という歌詞は、そのまま、探し物をするポールの心境と重なります。ポールだけが抱える忘れ物があるんですよね。


ベトナムのならず者に捕まったポールが歌うのが「God Is Love」です。彼の悟った境地が、この神への愛なんですね。


「Flyin' High (In The Friendly Sky)」はどこで使っていたか、分からなかった(>_<”)

他に、スピナーズ1974年のヒット曲の「I'm Coming Home」も流れていました。スピナーズもファンキーでノリノリだから、大好き(*^ω^*)
スパイク・リー監督の映画は、音楽のチョイスも素晴らしいので、そこは毎度テンション上がります( ˘ ˘ )ウンウン


小ネタで、ポールの息子のデヴィッドの名前が、テンプテーションズのデヴィッド・ラフィンから取ってたのに感激(ˆωˆ )フフフ…





オーティスのベトナムでのラストのセリフは、あの映画のセリフに呼応していると思うなぁ。なんせ、2度繰り返す。最高の二言( •̀ω•́ )و✧
改めて、チャドウィック・ボーズマンのご冥福をお祈りします。闘病しながらの素晴らしい作品への出演、ありがとうございました。R.I.P.