アニマル泉

逆情のアニマル泉のレビュー・感想・評価

逆情(1964年製作の映画)
4.2
母性愛が凄まじい若松孝二の初期の珍作品。FC所蔵作品である。白黒シネスコ。海辺の半島での家族のバカンスが暗転して絶体絶命の危機になる。崖から海に落ちた子供と父を救出出来るかというシンプルな構成で、本作の主題は「高さ」や「落下」になる。若松は「海」の作家であることも随所で楽しめる。草原の丘と断崖と村までの一箇所が本作の舞台である。若松の主題である「荒野」「密室」につながる一箇所映画だ。父と子が満潮で溺れるという「時間」の映画でもある。父と母が情事にふけっていると息子が居なくなるという事件の発端がそもそも呑気なのだが、二人を助けるためにどんな事でもする母の鬼気迫る母性愛が凄い。下着姿と裸足で山を走る、坂を転げ落ちる、凶暴な脱獄犯に捕まってしまうのだが、脱獄犯に自家用車をあげる事を条件に救出を手伝わせる、あげく強姦されても父子の為なら受け入れる、この体当たりの前進をやめない母親に最初は唖然としたが、だんだんと感動を覚えた。若松は危機の連続をスイッシュズームとバッハの「トッカータとフーガ」で律儀に盛り上げる。村人で若き野上正義が出演。
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