ひゅうどんこ

亡国のイージスのひゅうどんこのレビュー・感想・評価

亡国のイージス(2005年製作の映画)
3.9
(前置きとして)
◎明確なメディアミックスを適用しており、他媒体との相互補完を前提としての鑑賞が適当と思われる
◎原作からの改変は、関係各所への配慮であり映画という媒体の諸制約を考慮したものであるため、原作既読諸賢におかれてはご留意されたし
◎同年公開に『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』、『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』、『宇宙戦争』などがあるが、『ハリー~』の製作費$150,000,000(2005年当時$1≒¥117→およそ175億5千万円)に対して、本製作費12億円とされており、特殊撮影等の時代考慮とコストパフォーマンスを勘案の上スコアリングされることが望ましいのではなかろうか


 あっ、前置きで大体書いてしまったら本文がスカスカに🤦。。

 まぁさて、我が国において国を護る要の自衛隊が所属(?)する省庁が防衛庁から防衛省に昇格した頃に、福井晴敏が書いた小説がベースとなってます。

 自衛隊の協力については、原作小説刊行後に映画化案があがり、防衛庁へ協力要請に訪れるも、1999年当時の同長官(小渕第1次改造内閣の野呂田芳成か小渕第2次改造内閣の瓦力かは不明)から一蹴されて一旦白紙となり、2000年の連載漫画にて好評を博した後再度防衛省に協力要請し、原作小説の愛読者でもあった石破茂防衛相によって承諾を得たという経緯があります。

 某国の工作員が、海上自衛隊のイージス艦に潜入することから話が展開。お国の名前は出ませんが、工作集団の親玉は朝鮮名なので、必然的にNなのが分かります。
 Nから工作集団が日本に送り込まれるというと、福岡ドームを足掛かりに福岡を制圧、絶妙に市民を懐柔しつつ、手も足も出ない政府を嘲笑いながら日本転覆を謀る‐‐という村上龍の小説を思い出します(こちらも映像化して欲しいものですが..)。

 15年前の作品であり、現在とは状況が違うところもありますが、北の脅威は続いています。
原作小説を福井氏が執筆している頃、北の国では、金日成から最高権力者の地位を世襲した金正日が政敵の粛清開始。また、南の大統領に、太陽政策を掲げる金大中が就任したにも関わらず、延坪(ヨンビョン)海戦が起きます。
映画公開の翌年には、核実験を強行して悪の枢軸国と呼ばれます。

時は流れて現在、国家元首が金正恩に変わり、先代以上に先軍政治を推し進めています。
直近では、日本国内の陸上におけるイージス・アショア配備に関するプロセスを停止することが表明され、専守防衛の難しさが浮き彫りになったのが記憶に新しいですね。

 フィクションでありながらも、絵空事と捨て置けない本作。そしてその万が一の最前線で、命を張った人達が、私達を絶えず守ってくれているのが真田広之をはじめとする出演者の好演に引き込まれたことも相まってよく分かりました。
色んな意見もありますが、エンターテイメント性を損なわず、普段考えることもない国というものについて目を向けさせてくれたこの映画に、私は好印象を持ちましたよ。