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あのこは貴族のkoyaのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.5
私は関東住みで東京で働いているし、学校もずっと東京だったのでそんなに東京に特別な思い入れはないのですが、地方の人にすると「東京」とは特別なイメージと興味を持っているようです。

日本はイギリスほど階級社会ではないかもしれないけれど、この映画の華子(門脇麦)は裕福で東京、高級住宅街松濤に産まれ、育ち、結婚し、暮らしていくのが当たり前で何も疑問を持っていない。

反して、富山から勉強して東京の名門大学に入った実力の持ち主、美紀(水原希子)は大学に入っても「外部生」で、ついには学費も払えなくなる。

身分が違う、という言葉は日本人はあまり使わないけれどこの映画では明らかに身分の違いがくっきりと描かれます。

何もかも高級な世界であると同時に狭い世界、東京というより松濤の世界の住人、華子。

キャバ嬢を経て仕事にありついて東京暮らしを続けている美紀。

その2人が青木(高良健吾)の存在でクロスする。
華子は「肩書としての良家の子女の妻」
美紀は「都合のいい女」

東京に憬れるのは理解はするけれど共感はできない自分は、華子も美紀も思い入れはできません。
しかし、2人の在り方は環境や身分が違うようでどちらも窮屈です。

その窮屈さを上手く描いた映画。
華子のご学友たちは何の疑問もなく、親や家の敷いたレールの上に居座っている。
そういう人達もたくさんいるのでしょう。

そしてそんな人たちの下にいる無数の貧しい人々、東京に憬れてしがみつく人々がいる。

職業に貴賤はない、といいますが私はあると思う。
と同時にこの映画を観て、産まれに貴賤はある、しかしどう生きるかはその人次第という救いを見たような気がします。

おとなしい自分を持たないお嬢様、門脇麦と行動力でむなしさを感じつつも東京に住み続ける美紀、水原希子が普通だったら犬猿の仲になるはずなのに、「窮屈さ」という共通点でもって近づいていくのが興味深い所です。
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