ひろるーく

あのこは貴族のひろるーくのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.3
医師を多く生み継いでるいわゆる上流階級として生まれ育った華子(門脇麦)と、地方(富山県)でリストラされたばかりの父がいる家庭から努力の末、慶應義塾大学に入学してきた美紀(ミキティ=水原希子)。

この身分が違う(とされる)二人の女性の東京で生きる二十代の日々の物語。

華子も十分に上流なのだが、上流の上にはさらに「家柄がよい」上流がいる。
医師の家庭も十分に裕福で、上流の生活を送っているが、代々政治家を生んだり大きなビジネスを代々継いでいるような、家系図が大好きな家庭はさらにその上、超上流。そこにいるのが幸一郎(高良健吾)。

幸一郎も慶應義塾大学。たぶん幼稚舎からのエスカレーター。
これは内部生という。そして大学から厳しい受験戦争をくぐり抜けこの高偏差値の大学に入ってきた美紀。外部生と呼ばれる。


学生時代に幸一郎と美紀は出会っていて、その後、偶然であった二人。
であるが、幸一郎は自分より身分が下の美紀は、遊びの相手でしかない。
美紀は自分の出身地さえ知らないであろう(自分の身体にしか関心がないであろう)幸一郎のことを純粋に愛していた。しかしそれはけして結婚というかたちで結ばれることはないであろうことを美紀はわかっていた。

華子は、叔父の紹介で幸一郎と出会う。華子は一目惚れをしている。
やさしく紳士的な幸一郎。それはただ単に育った環境の中で育まれた一般人に対する処世術であるのだが、華子には新鮮に映る。

幸一郎のプロポーズで、華子と結婚する。
当然、美紀は身を引く。その時も、幸一郎は、なんで美紀と別れなければならないの?という感じであった。
美紀はあまりにも悲しい。悲しすぎる。故郷の物産であるホタルイカの燻製をお別れのプレゼントに渡すシーンは、涙が出る。悲しすぎるね。

そんなこんなで、結婚した幸一郎と美紀のその後が(この映画は章立てになっていて、第五章)、この映画の本質、描きたかった部分であろう。

幸一郎との微妙な関係の時期、華子の母親(銀粉蝶)が華子に語る台詞「世の中はああいう人たちを中心に回ってるんだから」は痛烈。「育ち」とか「身分」とかに囚われた者たちのあがきと言えばいいのか諦念と言えばいいのか。十分に上流な華子の家柄でも、世の中は回せないのだ。

幸一郎役の高良健吾がいい。ほぼ政治家になることを運命づけられたいわゆる「ぼんぼん」。やさしく小さなことにはこだわらない度胸。でも人の心まではわからない男。マシンだ。でも世の中の世襲政治家をアイロニカルに描いている。悪い人じゃないけど、人の心はわからない。そういう男。

この映画は女性が観たらもっといろいろなことを感じる映画だと思います。すごく面白い映画です。

華子の友人のバイオリニスト相良逸子役の石橋静河、美紀の故郷からの友人平田里英役の山下リオもすごくよかったです。

実はこの映画昨年観たのですが、どうしても気になって2度目の鑑賞になります。やはりいい映画だと思いました。脚本もうまい。カメラもいい。編集も飽きが来ない、素晴らしい。

いい映画です。
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