踊る猫

トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そしての踊る猫のレビュー・感想・評価

4.4
政治的イシューについてはさほど言及されず、ハリウッドやその他映画・映像業界の内側からトランスジェンダーに関する差別(噴飯物とすら言える描写や設定等など)が告発される。それはトランスジェンダーに関する誤解から生まれるものではあるのだが、身近にそうした人々を持たない無知が偏見を生み、その偏見が映像作品として結実することで更に増幅されるという悪循環が生まれていることを指摘している(大西巨人の卓抜な言葉を用いるなら「俗情との結託」だ)。グリフィスからヒッチコック、そして近年の作品まで名作と呼ばれている/呼ばれうる作品の中にもトランスジェンダーへの差別は盛り込まれていたことがわかり、私自身気をつけて観ないと差別感情/俗情に取り込まれてしまうなと思った。そんな中で当事者は冷静に、しかし熱いメッセージを放つ。一部の人物だけが潤うことを求めるのではなく彼ら/彼女たちのシーン全体が底上げされることを願う姿に胸打たれる。この姿勢を私はストレートの男性として受け留めたいのだが、くれぐれも「女性よりも女性らしい」といった言辞を弄してしまうことのないように気をつけなければならない。
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