あなぐらむ

変態おやじ ラブ・ミー!イッてんだぁ~のあなぐらむのレビュー・感想・評価

4.4
監督137本目となるMR. PINK こと池島ゆたか最新作。
R15の前作から続けての脚本・高橋祐太とのコンビ作で池島作品としては前年の「妻たちの宴 不倫痴態」に通じる家族ドラマであり、童貞克服講座はほんのフックでしかない。
練り込まれたと思われる物語は、三者三様の熟年童貞達の生き様の先に到達する見果てぬ「家族」、血縁を越えた繫がりとしての「家族」をおぼろげに現出させる試み。彼らはみな童貞ではなく、「孤独である事」を卒業していくのだ。

主演のかなで自由、この人はAVでは余りいい女優ではないかなと思ってたんだが、演技指導の成果か何かが降りてきたのか、池島映画のヒロインとしての類型のひとつにすっぽりはまる好演となった。
それに輪をかけて二番手・長谷川千紗がピンク映画らしいオーバーアクトを嫌味無く見せ収穫。更に松井理子が、池島さんらしい活かされ方で小津映画の原節子ポジをさらう。セメントマッチ作品としては絡みは少ないが、十分な内容だった。
ダメ親父役(これは小屋に来てる観客をそのまま照射している)なかみつせいじが素晴らしく、共闘する老人童貞・牧村耕次の枯れ具合に面白味の交じる老け役も絶妙、長谷川千紗との淡い関係性にはぐっとくる。
助演陣、竹本泰志、細川佳央の外道ぶりも際立ち、男優の厚みがピンク映画を豊かにしている。

性から始まり性に終わる映画が、しかし描くのは人の生死であり、悲喜こもごもの人生であることの一種魔法のような展観こそ、ピンク映画の面白味なのだ。黒澤から小津まで軽やかにステップしながら泣けるピンクをものしてみせる池島ゆたか監督、そのエネルギッシュな活動がどうかこのまま終わらず、今後も続いて欲しい。