タスマニア

ノマドランドのタスマニアのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.5
2021年30本目。

人間関係のリセットや断捨離の境地。

と捉えるのは軽薄で失礼だな。
自分の持論や考えの延長として「ノマド」を捉えようとすると、どうしてもこのようなアプローチになってしまう。

あくまでもリーマンショックの影響で生活が困窮した人々が生きていくために選択したものの一つであるはずなので、そこは誤解してはいけない。
ただ、物を求めて、豊かさを求めて生きていっている自分たちからは想像できない生き方で世界でもあったし、「ノマド」の生き方をしないと見えない世界や景色があることは確かだった。
そこに多少の「羨ましさ」を感じてしまったり、自分にない何かを求めて「一度リセットしてしまおう」という衝動的に思う瞬間の感情と接続してしまうパワーがあると感じた。

それは、フランシス・マクドーマンドの演技もそうだけど、主要人物が俳優でもなんでも無く、ただただリアルな「ノマド」達だったからというのもある気がする。いわば、ドキュメンタリー。
そして、そう考えるとフランシス・マクドーマンドのえげつなさを再確認した。めっちゃ馴染んでいたというか、佇まいや溶け込み方がえげつない。
Amazon の工場で働いている姿も、車中暮らしをやっている姿も、オスカーを受け取る姿も全部しっくり来るし。
アカデミー賞の主演女優取るのかな。すごいなぁ。

あと、ノマドの民が犬を連れていることは結構あったけど、猫を連れていることはなかったのはちょっと面白い。
「住む場所や住む人に依存しない生き方や生存力」は犬よりも圧倒的に猫のイメージで、ノマドの生き方にマッチしそうな勝手なイメージがあった。
もしかしたら、ノマドは「ホームレス」ではなく「ハウスレス」と捉えるようにすれば、むしろ、人間や他者との共存を生存戦略として選んで DNA に刻み込まれている犬の生き方の方がノマドの民への正しい理解とマッチするのかなーとか勝手に考えてたりした。

月並みだけど、 "See you down the road(また道々で会おう)" って良い言葉で良い考え方だな。
「さよなら」で別れや死を理解する強さも素敵ではあるけど、長い人生の中で辛さに直面したときに、まず「生きる」ことを選択するために「また会える」というメンタリティを持つことも重要なのかも。

コロナで多くの人が命を落とし、社会を取り巻く環境も変化し、ライフステージの変化を意識したり、考えなくても良かったことを考える時間が増えた。
そんな現代に自分もちょっと必要としていた生き方や考え方がそこにあったなーという感じ。
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