ケイスケ

ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償のケイスケのレビュー・感想・評価

4.1
第93回アカデミー賞の作品賞にノミネートされたにも関わらず日本ではどうにも扱いが悪い本作。結果、助演男優賞と歌曲賞を取りましたね。いやー、面白かったですよ。

1960年代後半、アメリカで勢力を伸ばしていた黒人人民主義運動団体「ブラックパンサー党」。元窃盗犯からFBIの情報提供者に転じたウィリアム・オニールは、ブラックパンサー党のイリノイ支部に潜入しカリスマ的指導者であるフレッド・ハンプトンに接近する。その政治的手腕で頭角を現しつつあるハンプトンはJ・エドガー・フーバー率いる捜査当局に睨まれる存在だった。そして歴史に残る事件は起こる…。

まず本作を観るにあたり、ブラックパンサー党と、その指導者フレッド・ハンプトンのことを調べておくといいかもしれませんね。映画を観ていればわかりますが、当時の黒人たちの情勢が頭に入りやすくなると思います。私も詳しくなかったのですが、調べているうちにFBIの闇が垣間見えて恐ろしくなりました。

ハンプトン役のダニエル・カルーヤがオスカーを取りましたが、ブラックパンサー党とFBIの間で揺れ動くラキース・スタンフィールドが非常に良い演技をしていましたね。もちろんカルーヤも素晴らしい。『ゲット・アウト』の主人公役と言うとパッと出る人も多いでしょう。ちょっと気になったのが『裏切りの代償』という邦題。オニールの心情を思うと少し邦題が軽いような…。てかデニス・ホッパーの同名映画思い出したわ。

実話物の映画で最も目を引く場面はラストに語られるその後ですよね。特にオニールの実際の映像。インタビューを受けた日と、彼がその後に辿る運命が辛いですよね。てかこの頃のFBIってほんとどうかしてると思うわ。個人的に『ノマドランド』が作品賞の受賞は妥当だと思いましたが、本作も匹敵する素晴らしい映画です。そして日本の配給会社さん、少なくともオスカーノミネート作品くらいは劇場公開をお願いします!