へたれ

水俣曼荼羅のへたれのレビュー・感想・評価

水俣曼荼羅(2020年製作の映画)
3.4
良かったとこ 愛すべき人たちのエピソード
独特の個性を発揮する愛すべき人物に出会えるのが、原一男監督のドキュメンタリーの魅力。今回は、出刃包丁で脳をスライスする浴野先生と、水俣病患者の一人の生駒さん。第一部はほぼ浴野先生に密着して水俣病の病像を見直すという展開が面白かった。第二部の前半に出てくる生駒さんの奥さんとの馴れ初めについては、原監督の執拗なまでの質問もあって微笑ましい。そして、この二人が検査をするシーンや、生駒さんが検査に悩むシーンも良かった。

ダメだったとこ 裁判の展開に左右される終盤
加害者の側と言える国や熊本県は、政治的判断で一律補償したことにより、加害責任を果たしたと整理し、被害者側は水俣病認定されてあらためて謝罪されるまでは終わらないという構図。この構図は従軍慰安婦であれ、南京大虐殺であれ、加害責任をうまく取ることができずに被害者の神経を逆撫でし続ける日本という構図と同じなので、この映画を見なくても容易に想像できる。この映画でかなりの時間を割いている裁判とその後の会見シーンは、論拠は不透明で勝ち負けだけが入れ替わる判決と、加害/被害の認識のすれ違いによる押し問答を被害者側の目線で描くことの繰り返しなので、感情の高ぶりに反して単調。
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