水俣曼荼羅の作品情報・感想・評価

水俣曼荼羅2020年製作の映画)

上映日:2021年

製作国:

上映時間:372分

監督

「水俣曼荼羅」に投稿された感想・評価

水俣病を研究する二人の医師がまるでホームズとワトソン。脳という密室で起った「個」に対する殺人を彼等が解き明かしてゆく様は良質なミステリを読んでいるかのようだった。
しかもこれがかなりの難事件で、世の中の無理解もあってなかなか「個」としての犯人が見つからない。何故ならそれらはすべて会社や国といった茫漠とした「組織」であり、担当者として矢面に立たされる役人はそもそも、患者たちが泣く泣く手放さざるをえなかった「個」を立場上持つことが許されておらず(と思い込んでいるだけだと思うのだが)、「個」を捨て、組織に忖度することこそが正義だと信じる彼らに、水俣病患者たちの恐怖や苦しみなど永遠に理解できない構造になっているのが恐ろしく、やるせない。

じゃあ重く辛気臭いシーンが6時間続くのかというと、これが意外にそうではなく、むしろ逆にコメディ映画かと思うほど笑いどころがあるのには驚いた。

特に、患者の遺族から提供されたホルマリン漬けの脳をユニクロの袋に入れて大事そうに抱え、ウッキウキで帰るくだりは、その脳への偏愛っぷりがなんとなくホームズっぽくて、思わず笑ってしまった。

本当に奇跡ような映画で、これも一重に水俣病患者とそれを取り巻く人々の人間的魅力のおかげであり、同時をそれを逃さずに映し撮った原一男監督の手腕と15年という歳月、彼らとの地道なコミュニケーションの積み重ねのなせる技であることは忘れてはならないと思う。

世の中を変えるのはいつでもそうした地道な行動の積み重ねなのだと改めて思う。

15年かけてひとつの作品をつくる。こういうところはドキュメンタリーには敵わない。劇映画ではなかなかない。
ドキュメンタリーだからといって食わず嫌いせず、ひとりでも多くの人に観て欲しいと思う。
6時間なんてあっと言う間。ヘタな映画3本観るよりもずっと満足感がある。15年という年月を思えば短すぎるくらいだし、しかもとにかくクソ面白い。ずっと面白い。頭で水俣病の病像について理性的に考えながら笑いながら泣き心の底で深く唸る。どうにかなっちゃうんじゃないかと思うくらい感情を揺さぶってくる。泣けるだけの映画、笑えるだけの映画は数あれど、これだけすべての感情をまぜこぜに動かしてくる作品そうない。
まさしく「曼荼羅」。
kyoko

kyokoの感想・評価

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372分、三部構成。てっきり8時間だと思っていて(監督自身これ以上は短くできないと言ってたし)そのモードで覚悟していたせいか、まったく長さを感じなかった。
ニュースで水俣訴訟が流れるたびに「まだ続いているのか」と思っていた自分をぶん殴りたい。2004年の関西訴訟の最高裁勝訴で初めて県や国の責任が認められ、認定方法に誤りがあったことが判明したにも関わらず、いまだ認定を受けられない人が大勢いる。ぜんぜん終わってなんかない。

裁判の道のりと共に、患者たちに焦点があたる。爆笑したり涙したり(特に生駒さんと老医師の絡みは最高だった)「人間」をとことん撮る原監督らしい場面の連続(初夜のくだりはしつこかった笑)。感覚障害は人間の文化を奪うという二宮医師の言葉には涙が止まらなかった。

官僚の「アホみたいに繰り返す」喋りは相変わらずで、苦笑が漏れた。
噴出する怒りに対して「だってボクが決めたことじゃないもの」という不満がありありと見て取れた。
でもその反面ふと思う。
裁判に勝ったら土下座されたらその怒りは収まるのだろうか。
彼らの苦しみを癒せるのはシンパシーではなくエンパシー。
天皇と対面した緒方さんの感情の変化に、本当の救いとは何なのかのヒントがあるように思った。

生前の石牟礼道子さんの姿を見ることができたのが嬉しい。
この人こそが「悶え神」
小学校の社会科の教科書に載っていた写真。母親が水俣病のわが子を悲しげな表情で抱き抱えている姿を見て当時ショックを受けたのを今でも覚えている。この作品は原一男監督が十数年という長い歳月の間、水俣病患者とその支援者を密着取材し、普段の生活や学術研究、そして尚も続いている行政訴訟の模様を収めた長編ドキュメンタリー。

たまたまその場所に住んでいたというだけで公害の被害を被った人たち。水俣病患者の苦しみや生活のし難さは今までの想像を遥かに超えていた。水俣病は身体にどのような症状をもたらすのか、一部だけでも知ることが出来たのはとても良かった。

そして注目すべきは行政訴訟の国や県の対応。過去作『ニッポン国vs泉南石綿村』と同様、これは日本に住んでいる全ての人にぜひ観て欲しいと思った。この様子を観て感情が昂らない人は恐らくいないだろう。

6時間超え(間に2回休憩)の作品だったものの、一度も時計を見ることなく映画にのめり込めた。

《東京フィルメックス2020》
somal

somalの感想・評価

4.5
東京フィルメックス
三部構成でランタイム6時間以上の長尺です。
原監督、登場人物の二宮先生登壇。

水俣病をめぐる裁判の経過とともに、人々の日常生活から水俣病の学術研究まで、幅広く描いた15年にもわたるドキュメンタリーです。
文化庁の助成を受けているのですが、文句をつけられないか少し心配になりました。

製作のきっかけは大阪電通大の先生からの提案で、気になった人やエピソードを全て撮れたので撮影終了としたそう。
エンタメ性を損なわないように編集するという監督のコメントが興味深かったです。
ネットを使った監督への質疑応答で、自分の質問が読まれてちょっと嬉しかったり。

原告の命と財産を擂り潰してしまう国家賠償請求の残酷さを改めて考えさせられました。
自分にはこの手の裁判は、国が原告らが死に絶えるまで時間稼ぎをしているとしか思えませんので。
原告らに対する官僚の霞ヶ関文学は聞くに耐えませんでした。(そもそもあんたらは税金で養われている立場だろうと)
原告が殉教者に見えました。

二宮先生、奄美から来られたということで調べてみたら、現在は徳洲会の病院に勤務されているようですね。

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