ぴあフィルムフェスティバルのオンライン配信が10月末で終了ということで、機会があり、鑑賞。
[あらすじ]
車いすの監督が、様々なしょうがい者へのインタビューを通し、いつしか、自分や周りとの関係性を記録することになっていくセルフドキュメンタリー。
[感想]
卒業制作という経緯もあり、映画としては、かなり見辛い部分や荒さを感じるものの、題材そのものの特殊さゆえに、社会的意義のある映画だと思った。
僕自身、現在、卒業制作に取り組んでいるということもあり、作品そのものの方向性が、製作陣の対話や意見の変化によって、次第に「へんしんっ!」していく様には、学ぶ部分が多く、とても参考になった。
[作品の"重心"を支える砂連尾理さん]
本作には、『ハッピーアワー』制作の際、演者に作品の核"身体表現"の指導などを行った、振り付け師兼ダンサーの砂連尾理さんが登場する。
本作の主体は、監督で自身もしょうがいを持つ石田智哉さんなのだけれど、その展開を導いていくのは、間違いなく、砂連尾理さんだ。
石田さんと、彼と共に取材をするクルー(同級生)の関係性に疑問を投げかけ、お互いの理解を深めるコミュニケーションを促す。
しょうがいを持つ表現者へ取材していく石田さんを、あえて表現者の側に取り込む。
それらの試みのひとつひとつが、このドキュメンタリーの"重心"を支えているとも言え、彼の存在があるからこそ、本作が興味深い内容になったのではと思った。
[他者を理解することの難しさ]
本作では、健常者としょうがい者のみならず、しょうがい者としょうがい者の間に生まれる溝についても語られるのが印象的だった。
「しょうがいを持った人」と、ひと括りにしようとしても、それぞれが抱いている問題は違う。
そのため、「しょうがい者という立場だからこそ、様々なしょうがいを知りたい」と語る人たちの意見が、かなり新鮮だった。
[作品そのものに感じた理解の難しさ]
ただ、一方で、映画の演出として、健常者である自分にとっても(だからこそ?)、理解が難しいと感じてしまう部分があったのも事実だった。
特にクライマックスに写し出される、砂連尾理さんを筆頭とした関係者による身体表現のシーン。
このシーンでは、間違いなく、身体表現を行う当事者にしか分かり得ない世界が表出していたため、画面を見つめている自分自身は、怪しい宗教を見ているかのような感覚を抱いてしまった。
それは『ハッピーアワー』における身体表現WSを見たときと、ほとんど同じ感覚だったけれど、これこそが、他者や他者の世界観を理解することの難しさなのではないか?とも、後々思った。
無意識に抱いている「他者への偏見や違和感」、それに気づいて取り払うことこそが重要であることは分かっているつもりでも、作品を観ているうち、自分自身にも見つめ直す部分が多いことを気づかされた。
[終わりに]
バリアフリーを実現するため、作品自体が日本語字幕を採用しているなど、構造自体に、様々な配慮を感じられた本作。
映画に、ある程度の見やすさや分かりやすさを求めてしまう自分としては、全体的に地味な印象を受けずにはいられなかったものの、そんな感想も踏まえて、他者に対する自分自身の想像力を、もっともっと磨いていく必要があるなぁと、思い知らされる一作だった。
参考
へんしんっ!|DOKUSO映画館
https://dokuso.co.jp/introduction/309
(配信はこちら)
『へんしんっ!』93分 監督:石田智哉 | uP!!!
https://up.auone.jp/articles/id/81886
(配信はこちらでも。ちなみに、auスマートパスプレミアム会員の方は、見放題です。)
映画チア部がオススメする「PFFアワード2020」後編 "ぴあフィルムフェスティバル×映画チア部"vol.3
https://note.com/moviecheerkobe/n/nb299e05a5bd4
(こちらにも寄稿しております。併せて、チェック。)