もものけ

キャッシュトラックのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

キャッシュトラック(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ガイ・リッチー監督が大好きなんです。

危険地帯専門で運営する警備会社の輸送トラックが襲われ、二人の警備員と市民が犠牲になる事件の数カ月後、一人の男が倒産した警備会社からリクルートしてくる。
冷酷な瞳を持ち、ユーモアすら失ったような不気味な男だが、ある目的があるのだった…。





感想。
クエンティン・タランティーノ監督とは違って、勢力的に新作を撮影してくれるガイ・リッチー監督。
秘蔵っ子ジェイソン・ステイサムはいうなればクエンティン・タランティーノ監督のハーヴェイ・カイテルであるほどのお気に入りを起用して、舞台を珍しくアメリカに持ってきた新しいアプローチからなる作品。

下品なジョークと無駄口ばかりの貴重品輸送専門の会社に入社する、”Wrath of man”を秘めたイケてないオッサンの日常業務から始まる物語で、フランス映画「ブルーレクイエム」のリメイクとのことで、いつものガイ・リッチー監督の雰囲気とは異なるのも頷ける。
観客目線に拘っているのか、冒頭の現金輸送車が襲われるシーンは、車内から第三者視点で襲撃の一部始終を眺めるように撮影され、新人教育としてジェイソン・ステイサムが現金輸送車業務のなんとかをレクチャーされる視点で、仕事ぶりを説明していたりと、ストーリーの中に解説会話を用いずに演出していて雰囲気が伝わります。

割と熱い男や好青年役が多いジョシュ・ハートネットが、嫌な相棒の役柄を演じているのが新鮮です。
ジェイソン・ステイサムもガイ・リッチー監督作品のいつもの間抜けキャラではなく、アクション映画のジェイソン・ステイサムとしてクールでお笑いなしの演技なので、ガイ・リッチー監督の雰囲気がない作品。

リメイク版作品でありながら、お得意のエピソード構造のストーリー演出で、犯罪スリラーとしてよりヴァイオレンス色を強めにしております。
チャプター形式で時間軸を行ったり来たりしながら、真相に迫る演出を加えています。
オリジナル版を鑑賞していない観客を配慮した、男の目的意義が不明のまま、不可解に進むストーリー展開で、"善"なのか"悪"なのかスリリングさが増す仕掛け。
私はオリジナル版を鑑賞しており、作品の面白さは体験済みですが、リメイク版としての切り口が気になる演出は非常に上手い。

徐々に変わってゆく怪しい容疑者達が、内部から外部へ移り全くの無関係な軍隊上がりへ迫ってゆきますが、追う側も怪しい犯罪組織のボスという展開で、アンダーグラウンドな犯罪組織のエゲツない暴力の世界が見せつけられてゆき、スリラー描写として驚きの連続をシリアスに描いております。

復讐する男の話から強盗計画へストーリーが変化してゆき、車庫での復讐者と、強盗団、巻き込まれた警備員、到着するSWAT警察と四つ巴で殺し合いをする、ガイ・リッチー監督の十八番が迫力満点です。
また強盗団でも殺し合い裏切り、一人生き残った宿敵が金を手に入れてオサラバ。

そのまま終わる訳もなく、キチンとラストでは肝臓、脾臓、肺、心臓にダメージを負わされて復讐されます。
シェイクスピアの戯曲「マクベス」以来続く復讐の物語は、やっぱりドラマティックで心に残りますね〜。

単純発想で「キャッシュトラック」というタイトルにするよりも、原題の"Wrath of Man”のままのほうがよかったですが、ガイ・リッチー監督のアクションに重点を置いたリメイク版に、5点を付けさせていただきました!!
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