『おみおくりの作法』のウベルト・パゾリーニが監督&脚本ということで観たかった作品。
余命僅かのシングルファーザーが、自分が死んだ後の息子の新しい家族探しに奔走しながら苦悩する姿を描く。
あぁ、胸が締め付けられた。
"死"の概念すらないたった4歳の子を残して逝かないといけないなんて。
死ぬこと自体よりも、その先の我が子の気持ちを想像するのが辛い。
父ジョンと息子マイケルの日常の何気ないふれあいがとても美しかった。
たぶんそれは撮り方とかではなく、観てるこちらも死を意識してるからというのが大きいと思う。
これも演出は至って地味。
言葉で語らないし、劇伴もほぼない。
そんな突き放したようなドキュメンタリータッチの中で、ジェームズ・ノートンの翳りのあるきめ細やかな演技が映えていた。
息子役の子の演技がまたすごく自然で、会話のぎこちない間なんかが逆にリアリティを高めてる。この子の撮影秘話を聞きたいな。
死を知らないマイケルに、死をネガティブでない意味合いで表現して伝える対話にジ〜ンとくる。
そうすることでジョン自身もただ悲観するのでなく、冷静に内観し出している気がした。
たくさんの候補の中から選んだ親は…
よく「大切な事を決断する時は直感を重視せよ」と言うけれど、
ジョンにあの親を選ばせたセンスがとても好き。好条件揃いの額面ででなく。
いたいけな瞳に父の姿を焼き付けるようなラストカット。目頭が熱くなった。
ウベルト監督、シリアスだしドライだけど、冷たいんじゃない。
ミニマルな演出の中で、人の魂のじんわりした優しさを掬う匙加減。そこが秀逸だと思う。