もものけ

オールドのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

オールド(2021年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

そこは楽園を作り上げた高級リゾート地"アナミカ"。
カッパ一家はバカンスに訪れた"アナミカ"で、支配人から自然保護区に指定された立入禁止区域のプライベート・ビーチを紹介される。
二度と訪れない機会を前に、一生に一度の体験をするため、リゾートの用意するバスに乗るがもう一組の家族も同伴していた。
しかしそのビーチには、謎が隠されているのだった…。






感想。
南米では人気俳優ですが、ハリウッド作品では珍しいキャスティングであるガエル・ガルシア・ベルナルを起用しております。
その他のキャスティングは、メジャーではない役者で固めておりますが、それぞれ個性的でインパクトのある役者ばかりなので、安心して観れました。
しかし子供だけは一気に成長してゆくので、キャスティングがコロコロ代わってゆき、個人的に好きな俳優アレックス・ウルフが登場してきた時は更にワクワク感が増してゆきました。
とはいえ最も最高のキャスティングは犬役のヨークシャテリアではないでしょうか。
その愛くるしい仕草にメロメロになりましたが、あっさり前半で死んでしまいます。

M・ナイト・シャマラン監督お得意のスリラー作品で、相変わらずの味のあるフィルムで撮影された極上の映像美が魅力的。
派手やかな色彩の西海岸特有のフィルムではなく、暗く落ち着いたトーンでありながら発色豊かで、幻想的な映像を生み出す質感が、スリラー作品にマッチしております。
少しずつ進展させながらも同じカットで表現しているので、時間軸の進行に観客も巻き込まれてゆく手法がとられています。
数分で成長してしまった我が子に狼狽する夫婦の描写が、なんとも不気味さを演出しております。

分野ごとのスペシャリストを登場人物に設定しているので、置かれた状況の説明的解釈が無理なく展開してゆき、違和感がないです。

人間に唯一平等に訪れる"時間"をスリラーにして、若い者には"成長"でも大人には"老い"として訪れる恐怖が、支配人の言葉である"一生に一度の体験"という意味深なセリフから見て取れる伏線があり、早い"成長"がもたらす教育されない未熟さが、子供すら持ち合わせる動物的欲求の果てに妊娠を理解できないシーンには恐怖が募りました。

なんと一日で50年の歳月が流れるビーチで、製薬会社が治験を行う事実に驚愕し、毎日スケジュールされたカレンダーにびっしりと次の治験者の名前が書かれているシーンには功利主義的な企業への皮肉にもとれます。
非常に美しい景色が特徴的な作品でしたが、人の語る美しい詭弁の裏側には、醜い現実があると言っているように感じました。

やや雑な部分もあり多少眠くなるシーンもありましたが、それなりに面白かったので、3点を付けさせていただきました。
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