噛む力がまるでない

スカイライン −逆襲−の噛む力がまるでないのネタバレレビュー・内容・結末

スカイライン −逆襲−(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 SFにシラットを掛け合わせる奇策がうまくいった前作『スカイライン -奪還-』がシリーズのピークなのは誰の目からも明らかなので、3作目になるこの『スカイライン -逆襲-』はほぼ当たり屋のような感覚で観に行った。案の定、全体的に平凡なSF映画におさまっており、たいした興奮を得ることはできなかった。

 『エイリアン』シリーズのいいところ取りしたみたいなプロットで、そのわりに宇宙パートと地球パートを分けて話のテンションを無駄に落としているのは難点だ。二場面を最後に合流させる意味をつけるのであれば、ふたたび洗脳された大勢のパイロットを宇宙船で吸い上げるシーンをもっと強調すべきだと思った。「吸い上げる」がこのシリーズの象徴なのだから、侵略する側の技術を人類逆転のギミックとして使うことで三部作のまとめがうまくいくはずなのに、なんだかあさっりした見せ方で勿体なかった。アクションも暗いシーンが多いせいで見にくくて爽快感に欠ける。格闘シーンはフアナ役のヤヤン・ルヒアンが前作に引き続き頑張ってはいるが見せ場が少ないのが残念で、代わりにジー(チャー・リー・ユン)が突如としてキレキレのアクションを見せているのは楽しかった(なぜこんなにも動けるキャラクターが船でバックアップを務めているのかが不明だが、それがこの映画のチャームでもある)。

 そんな中でこの映画が面白いなと思ったのは、ローズとトレントを疑似きょうだいとして見せている点だ。二人とも過酷な運命を経て、姿形は違うが同じ想いを共有する仲である。無駄口を叩きながら互いをサポートし合い、いざというときの覚悟も決めている。ハーベスターに洗脳されたローズと救いに来たトロントが戦うシーンなんかは切なさがあって良かった。あと、ローズはコバルトワンに乗り込んでからはヘルメットでハッキリと髪型を見せないのだが、洗脳されてからはヘルメットが外れ、後ろに束ねたオールバックによってパイロットと似たような雰囲気になっている。これは彼女が自らの出自を受け入れて戦う意思を表していて、こういった形で提示する演出はなかなか気が利いている(のちにラドフォード将軍が「その髪形いいね」と言っているのはそれを皮肉っているものと思われる)。また、彼女が強さの象徴としてのタンクトップを前作のオードリーから継承しているのも大きなポイントだ。

 見たことあるような場面ばかりで感心しない点も多いが、三部作のバランスをうまく取る役割を果たしているとは思う。無邪気にやりたいことをやっている根アカな感じは嫌いになれないし、ラストの続編を思わせる振りにも「もっとやれ」という気持ちになった。監督のリアム・オドネルにはこのシリーズに縛られず、思いきったアイデアでどんどん映画を撮っていってほしい。